真・恋姫†無双~赤龍伝~第42話「別れ」
――――許昌――――
楽進「どこにも見当たりません!」
于禁「お屋敷にも見当たらなかったの」
李典「どうやら逃げたようやな」
許昌に戻った曹操たちは司馬懿を探したが、もうすでに司馬懿の姿はなかった。
玉座の間で各自が報告を済ませていく。
夏候惇「おのれー! 華琳様を欺きおって! 司馬懿め、絶対にゆるさんぞ!」
曹操「逃げたのなら仕方がないわ。桂花。細作を使って仲達の行方を追いなさい」
荀彧「はっ。必ずや!」
夏候惇と同じく、興奮した様子の荀彧は玉座を出ていく。
赤斗「一足遅かったみたいだね」
曹操「そのようね。最後に仲達を見た者は誰か?」
程昱「最後に司馬懿さんを見たのは、どうやら給仕の人たちみたいですねー」
曹操「その者たちをここに連れてきなさい」
程昱「はーい。了解なのですー」
程昱も玉座を出ていく。
曹操「凛。仲達の屋敷にある全ての文献、資料に目を通しておきなさい」
郭嘉「はっ」
赤斗「文献と資料を?」
曹操「そうよ。仲達が何を企んでいたのか、何か手掛かりぐらい掴めるかもしれないわ。だけど、仲達のことだから証拠なんて残していないでしょうけどね」
程昱「曹操様―。給仕さんたちを連れてきたのですよー」
そう言って、程昱は給仕係の女性二人を連れて玉座の間に戻ってきた。
曹操「御苦労様、早かったわね」
程昱「いえいえー」
曹操「……さて、よく来てくれたわね。顔を上げなさい」
給仕の女①「そ、曹操様。な、何か私どもに御用でございますか?」
曹操「そんなに畏まらなくてもいいわ。少し話を聞きたいだけよ」
給仕の女②「……私たちにですか?」
曹操「そう。……司馬懿のことよ」
給仕の女①「し、司馬…懿……さ、ま」
給仕の女②「あ……あぁ……うう」
司馬懿と聞いて、給仕係二人の様子が明らかにおかしくなった。
そして、懐に隠していた短刀を取り出して、曹操に向かって駆けだした。
給仕係二人の動きは、そこらへんにいる普通の兵士より速く、とてもじゃないが一般人の動きとは思えなかった。
郭嘉「華琳さまっ!」
曹操「!」
赤斗「曹操っ!!」
曹操を抱きかかえて、赤斗は給仕係二人の攻撃から曹操を守る。
しかし、給仕係二人は執拗に曹操を狙ってきた。
夏候惇「貴様らーっ!!」
その二人に向かって、夏候惇が斬りつけた。
曹操「春蘭、待ちなさい!」
曹操は赤斗に抱きかかえられたまま、夏候惇を止めようと命令した。
給仕の女①「ぎゃああ」
給仕の女②「ぎゃはぁ……」
夏候惇「えっ?」
しかし、一足遅く夏候惇は給仕係二人を斬り伏せてしまった。
曹操「あーあ。やっちゃったわね」
夏候惇「えっ……、あ…あの……華琳さま?」
程昱「曹操様は、その二人から司馬懿さんのことを聞き出したかったから、生け捕りにしてほしかったのですよー」
夏候惇「あ、申し訳ありません。……つい」
曹操「謝る必要はないわ。私を殺そうとした賊から私を守ってくれたのだから。ありがとう、春蘭」
夏候惇「はい♪」
曹操「それと赤斗。いい加減降ろしてくれるかしら?」
赤斗「え、ああ。そうだったね。……忘れてた」
いまだに曹操を抱きかかえたままだった事を赤斗は思い出して、曹操をそっと降ろした。
曹操「ありがとう、赤斗」
赤斗「どういたしまして」
郭嘉「華琳様。ご無事ですか?」
曹操「大丈夫よ。赤斗と春蘭のおかげでね」
郭嘉「一体何だったんでしょうか?」
夏候惇「華琳様、これも司馬懿の仕業に決まっています!!」
赤斗「これは……」
夏候惇「お前、何をしている!?」
いつの間にか給仕係の遺体を調べていた赤斗に夏候惇が尋ねる。
赤斗「いやさ、この子たち入ってきた時は、普通の子にしか見えなかったのに、曹操が司馬懿のことを聞いたら急に様子が変わったから」
郭嘉「何かあると?」
赤斗「……腕と脚の筋繊維や腱が切れて、骨も所々砕けている。限界以上の力を酷使したんだな。……普通はこうはならない」
程昱「おやおや、よく分かりますね?」
赤斗「これでも天界じゃ医者を目指していたしね。これぐらい分かるよ」
程昱「おおっ、それは意外でしたね」
夏候惇「それでお前はいったい何が言いたいんだ!?」
赤斗「司馬懿は、彼女たちに何かをしたのかもしれない」
郭嘉「それは彼女たちが、術か何かで操られていたということですか?」
赤斗「あくまで憶測さ。ただ……普通じゃないと思うよ」
曹操「…………」
典韋「失礼します。曹操様、秋蘭様と霞様がお戻りになられました」
典韋が夏候淵と張遼、許緒とともに玉座の間に入ってきた。
張遼「ちぃーす。今、帰ったで」
夏候淵「こ、これは、一体何があったのですか?」
玉座の間の様子を見て、夏候淵が尋ねる。
曹操「秋蘭、霞、お帰りなさい。待っていたわ。……色々と質問はあると思うけど、ちょっと待っていて貰えるかしら。説明はあとでするわ。風、皆を集めて。大至急よ」
程昱「了解なのですー」
曹操「それから、赤斗。ちょっと来なさい」
赤斗「うん、分かった」
郭嘉「華琳様、どちらへ?」
曹操「すぐに戻るわ。皆が揃ったら待っていてちょうだい」
赤斗は曹操に連れられて玉座の間を出た。
玉座の間を出た赤斗と曹操は、城壁の上までやってきた。
赤斗「曹操、どうしたんだ。皆を集めているのに、こんな所にきていいのか? 早く戻った方が……」
曹操「赤斗。あなた、仲達と何か因縁があるのではなくて?」
赤斗「いきなりだな。……因縁と言っていいものかどうか。ただ、僕が天の世界からこちらの世界にやってくる前に会った奴に似ていただけ……」
曹操「天の世界で会った? 仲達と」
赤斗「あくまで似た奴さ……。でも、もしも司馬懿と同一人物なら……色々と納得できる」
曹操「色々って何かしら?」
赤斗「寿春城で鴉という男に会った。その男は天の世界の武器を持っていた。もしも天の世界で会った男が司馬懿で、鴉が奴の仲間なら」
曹操「天の世界で手に入れた武器を、その鴉とやらが持っていても不思議ではない……。となると、仲達は妙な妖術と天の世界の力を併せ持っているということになるわね」
赤斗「そういうことだね……」
曹操「…………赤斗。これを返すわ」
曹操は赤斗に預かっていた赤い服を手渡した。
赤斗「これは……」
曹操「赤斗!………孫堅のもとに帰りなさい!」
赤斗「……どうしたんだ。いきなり? もしかして司馬懿のことが関係あるのか?……曹操?」
曹操「そうね。仲達のことも関係ないわけではないけれど……。もう、あなたに貸しはないわ。これ以上、あなたがここにいる理由はないでしょう」
赤斗「え?」
曹操「さっき、私を守ってくれたじゃない!」
赤斗「それはそうだけど……」
曹操「……だから帰りなさい。……でも、前にも言ったけれど、私はいつか必ず大陸全てを制覇してみせる。だから、あなたも呉と一緒に手に入れてみせるわ。覚悟しておきなさい」
赤斗「ふふ……分かった。……帰るよ。今までお世話になったね。曹操」
曹操「華琳よ」
赤斗「曹操?」
曹操「私の真名よ」
赤斗「それは知ってるけど」
曹操「私の真名をあなたに預けておくわ」
赤斗「……いいのか?」
曹操「ええ」
赤斗「分かった。ありがとう。そして………さようなら。華琳」
そう言って赤斗は、城壁を降りて行った。
城壁を降りた赤斗は、中庭に恋を迎えにいった。
恋「あ……赤斗。どこか行くの?」
赤斗の姿を見つけた恋が駆けよってくる。
赤斗「ああ、呉に帰るんだ。恋も一緒に行くだろ?」
恋「(コクン)……恋も一緒に行く」
赤斗「じゃあ、一緒に行こう」
恋「うん」
ここで赤斗は返してもらった赤い服に袖を通した。
孫堅から貰った赤い服を着たことにより、久々に江東の赤龍が復活した。
玉座の間には、魏の主だった面々が集まっていた。
曹操「皆、揃っているわね」
一同「はっ!」
典韋「曹操様。赤斗さんはご一緒じゃなかったんですか?」
曹操「赤斗なら…………帰ったわ」
典韋「えっ?」
張遼「どういうことや?」
曹操「これ以上、赤斗がここにいる理由がないからよ。さあ、軍議を始めるわよ!」
曹操は強引に赤斗の話を終え、緊急軍議を始めるのであった。
つづく
~あとがき~
呂です。読んでくださって、ありがとうございます。
真・恋姫†無双~赤龍伝~に出てくるオリジナルキャラクターの紹介
オリジナルキャラクター①『風見赤斗』
姓 :風見(かざみ)
名 :赤斗(せきと)
字 :なし
真名:なし
武器:花天と月影……二振りの日本刀(小太刀)。赤色の柄で赤銅の鞘に納まっているのが“花天”で、黒色の柄で黒塗りの鞘に納まっているのが“月影”。
本編主人公の少年。
身長168㌢。体重58㌔。年齢17歳。黒髪黒眼。
放課後に道場で古武術の達人である先生に稽古をつけてもらうのが日課だったが、ある日道場で黒尽くめの男に襲撃される。
その際、赤い光に包まれて恋姫の世界に飛ばされる。
死にかけていた所を、火蓮によって保護され“江東の赤龍”という異名を付けられる。
古武術 無双無限流を学んでおり、その奥義を使えば恋姫の世界の武将とも闘えることができる。
無双無限流には、『全ての奥義を極めしとき、その身に龍の力が宿る。』という伝承がある。
奥義には“疾風”“浮葉”“流水”“月空”“烈火”“絶影”“龍鱗”“狂神”などがある。
奥義の同時発動は可能だが、奥義単体の発動以上に身体に負担がかかる。
能力値:統率3・武力4・知力4・政治2・魅力4
オリジナルキャラクター②『孫堅』
姓 :孫
名 :堅
字 :文台
真名:火蓮(かれん)
武器:南海覇王……やや長めの刀身を持つ、両刃の直刀。派手な装飾はないものの、孫家伝統の宝刀。
孫策(雪蓮)たちの母親。
身長173㌢。腰まで伸びる燃えるような赤い髪の持ち主。
血を見ると雪蓮以上に興奮してしまう。
孫尚香(小蓮)には非常に甘い。周りの人間が呆れるほどに甘い。
この外史“赤龍伝”では孫堅は死んでいない。
能力値:統率5・武力5・知力3・政治4・魅力5
オリジナルキャラクター③『諸葛瑾』
姓 :諸葛
名 :瑾
字 :子瑜
真名:藍里(あいり)
武器:風切羽(かざきりばね)……火蓮から受け取った護身用の短刀。諸葛瑾(藍里)の実力が低いので、あまり役に立っていない。
諸葛亮(朱里)の姉。
諸葛亮(朱里)とは違い、長身で胸も大きい女性。髪は金髪でポニーテール。
温厚で気配りのできる性格で、面倒見も良い。赤斗の世話役として補佐につく。
一時は、自分たちとは違う考え方や知識を持つ赤斗に恐怖心を持っていた。
政治、軍事、外交と様々な仕事をこなすが、諸葛亮(朱里)には僅かに及ばない。
能力値:統率3・武力1・知力4・政治4・魅力4
オリジナルキャラクター④『太史慈』
姓 :太史
名 :慈
字 :子義
真名:嶺上(りんしゃん)
武器:雷電(らいでん)……二本の小型の戟。
非常に勇猛かつ、約束に律儀な武将。銀髪レゲエの女性。
孫策(雪蓮)と一騎打ちして引き分けたことがある。
それ以来、孫策の喧嘩友達になっており、よく喧嘩をしている。
また、諸葛瑾(藍里)と仲が良い。
弓の名手でもあり、その腕は百発百中。
能力値:統率4・武力4・知力3・政治2・魅力3
オリジナルキャラクター⑤『司馬懿』
姓 :司馬
名 :懿
字 :仲達
真名:不明
武器:不明
黒尽くめの衣装を身に纏った、曹操軍の軍師。
曹操軍に属しているが、曹操からの信頼はないといっても良い。
色々と裏で暗躍しており、虎牢関では張遼を捕え、術により自分の傀儡にしている。
今は、魏から姿を消している。
能力値:統率5・武力?・知力5・政治5・魅力?
オリジナルキャラクター⑥『玄武(げんぶ)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:魏軍正式採用剣……魏軍に配備されている剣。
司馬懿の部下。
普段は何の変哲もない魏軍の鎧を身に纏い、普通の兵士にしか見えない。
しかし、眼の奥からは異質な気を醸し出している。
鎧の下には黒の衣を纏っており、素顔は司馬懿に似ている。
虎牢関では、鴉と一緒に張遼を捕えた。
能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力2
オリジナルキャラクター⑦『鴉(からす)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:爆閃(ばくせん)……司馬懿から受け取った回転式拳銃。
司馬懿の部下。
性格は軽く、いつも人を馬鹿にしているような態度をとる。
司馬懿と同じ黒い衣装だが、こちらの方がもっと動きやすい軽装な格好をしている。
寿春城では、孫堅(火蓮)を暗殺しようとした。
能力値:統率2・武力4・知力2・政治1・魅力3
オリジナルキャラクター⑧『氷雨(ひさめ)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:氷影(ひえい)……氷のように透き通った刃を持つ槍。
司馬懿の部下。
青い忍者服を着た長い白髪の女。
背中には“氷影”を携えている。戦闘時には全身からは氷のように冷たい殺気が滲み出す。
洛陽で董卓(月)と賈駆(詠)を暗殺しようとした所を、赤斗と甘寧(思春)に妨害される。
官渡の戦いでは、呂布の部下を連れ去り、それを止めようとした陳宮を殺害する。
能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力3
オリジナルキャラクター⑨『宮本虎徹』
姓 :宮本(みやもと)
名 :虎徹(こてつ)
字 :なし
真名:なし
武器:虎徹……江戸時代の刀工が作った刀。
赤斗の古武術の師匠。
年齢は50歳。実年齢よりも、肉体年齢は若い。
赤斗と一緒に、恋姫の世界に飛ばされたと思われる。
最初は河北に居て、それからは用心棒をしながら、色々と辺りを転々としている。
赤斗曰く、『無双無限流の妙技を見せてやるっ!』が口癖で、その実力は呂布(恋)以上。
能力値:統率?・武力6・知力5・政治?・魅力?
※能力値は「5」が最高だが、呂布の武力と劉備の魅力は「6」で規格外。
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この作品は、基本的に呉√にそっては行きますが、他√に
脱線することもあります。
赤斗が曹操の保護下に入ったので、ただ今は魏√に脱線中です。
主人公も含めてオリジナルキャラクターが多数出てきます。
未熟なため文章におかしな部分が多々あるとは思いますが、長い目で見てくださると助かります。