真・恋姫†無双~赤龍伝~第73話「華琳との再会」
―――曹操の陣営―――
その夜、曹操の陣営では勝利を祝って大いに盛り上がった。
曹操も勝利の美酒に酔いしれた後、自分の天幕へと戻った。
曹操「……誰?」
天幕に入った曹操は、天幕の中に自分以外の誰かがいる事に気がついた。
曹操「……春蘭?」
呼びかけるが返事はない。
曹操「もしかして、桂花かしら?」
赤斗「いや。……僕だよ」
曹操「……赤斗」
暗闇の中から赤斗が曹操の前に姿を現した。
趙雲たちと一緒に、劉備のもとへ戻る途中、戦場へと引き返したのは曹操に会うためだった。
曹操の本陣の近くで馬を降り、奥義“絶影”で気や気配を消して本陣へと忍び込んだのである。
修行の成果により、今の赤斗の絶影は他の人間が視認するのも難しくなっていた。
赤斗「ひさしぶり。……なんだか、あまり驚いていないみたいだね」
曹操「そうね。自分でも不思議に思っているわ。もしかして、あなたが来るかもしれないと、心のどこかで思っていたのかもしれないわね」
赤斗「そうなんだ……」
曹操「許貢の残党の一件は悪かったわね。……右目がそうなったのも、そのせいなのでしょう?」
申し訳なさそうに曹操は、赤斗の右目について尋ねる。
赤斗「いや。曹操は悪くないよ。それに失明はしていないから気にしないで」
曹操「そうなの? で、何用かしら? わざわざ、ここまで忍び込んでくるなんて、余程の用ね。もしかして、私を暗殺しにきたの?」
赤斗「まさか、そんな事はしないよ」
華琳「そう。……なら何の用かしら?」
赤斗「………華琳。軍を退いてくれないか?」
華琳「それは、本気で言っているの?」
赤斗「…………ああ」
華琳「……答えなくとも、あなたならそれぐらい分かるでしょう」
赤斗「まあね。でも、一応聞いてみたかった」
華琳「これから、どうするの?」
赤斗「帰るよ」
華琳「そう」
赤斗「次に会うのは……赤壁、かな? じゃあね……華琳」
そう言うと赤斗の姿は気配とともに消えていった。
華琳「待っていなさい赤斗。あなたは必ず手に入れてみせるから」
華琳はそう言って微笑むのであった。
―――夏口・劉備の陣営―――
関羽「遅い!」
劉備「落ち着いて愛紗ちゃん」
赤斗が趙雲たちと別れて丸一日が経過しようとしていた。
関羽「しかし姉上! いくら何でも遅すぎます! もしや曹操に寝返ったのやもしれません!」
恋「……赤斗は、戻ってくる」
月「はい。必ず戻ってきます」
劉備「今は風見さんを信じて待とう」
関羽「…………はい」
諸葛亮「桃香様。風見さんは孫策さんの使いとしてきたと言ってたんですよね?」
劉備「うん。そうだけど、それがどうかしたの朱里ちゃん?」
諸葛亮「私が予想していた以上に早く、孫策さんの使者が来たので少し驚いています」
劉備「そうなの?」
諸葛亮「はい。今の曹操さんには、呉一国だけでは勝つことは難しいでしょう。だから、孫策さんや周瑜さんなら再び私たちと同盟を結ぶ為、使者を必ず送ってくると思っていました。でも、早くともあと数日はかかると思っていたのですが」
劉備「え! 風見さん、同盟のための使者として来たの!?」
諸葛亮「きっとそうでしょう」
関羽「奴らは信用できん! 袁紹に攻められた時も助力を求めたが、断られたではないか!」
赤斗「あの時は豪族たちの反乱を鎮圧するためです。それは知っているでしょう?」
諸葛亮「はわわ!」
関羽「お前!」
劉備「か、風見さん! 今、どこから!?」
曹操の本陣に忍び込んだ時と同様に、絶影で気配を消していた赤斗がいきなり現したので全員が驚愕した。
赤斗「劉備さん。お待たせして申し訳ありませんでした」
劉備に向かって赤斗は頭を下げる。
劉備「いえ! 大丈夫ですから、頭を上げてください」
恋「赤斗、おかえり」
赤斗「恋、ただいま。待たせたね」
月「赤斗さん!」
月が赤斗に抱きついた。
赤斗「さっきはろくに挨拶もできなかったけど…月、ひさしぶり元気だった?」
月「はい♪」
少し目に涙を浮かばせながらも、月は笑顔で赤斗の顔を見上げた。
赤斗「詠も元気そうで何より♪」
詠「ふ、ふん! あ、あんたこそ元気だったの?」
赤斗「まあね♪」
その後、赤斗は遠来の労をねぎらう為、劉備から宴に誘われた。
宴には劉備軍の主だった武将たちも参加していた。
趙雲「風見殿は今までどこへ?」
趙雲が赤斗にお酌をしながら訊ねる。
赤斗「曹操の所に行ってきました」
一同「!!」
関羽「貴様っ! やはり曹操に寝返るつもりだなっ!」
関羽が赤斗に近寄ってきた。
赤斗「そのつもりなら、ここには戻ってきませんし、曹操の所に行ってきたなんて言いませんよ」
関羽「なら何をしに曹操のもとへ行ったというのだ!」
赤斗「ちょっと撤退のお願いを……けど、簡単に断られましたよ」
そう言い終えると赤斗は劉備の方へと向き直った。
赤斗「劉備さん。もうお気づきかとは思いますが、今回は孫策の使いとして、再び同盟を結ぶ為に参りました。どうか、もう一度同盟を結んでは頂けないでしょうか?」
劉備「どうして、また私たちと同盟を?」
赤斗「それは分かりきっている事でしょう」
趙雲「曹操か……」
赤斗「はい。今、この大陸に残っている英雄は、呉の孫策。北の曹操。徳高き劉備さんの三人。しかし、曹操の力は強大。私たちが力を合わせなければ彼女に対抗できないでしょう」
関羽「だが、我らは呉ではなく、曹操と同盟を組むという方法もあるのではないか」
赤斗「……たしか汜水関での戦いの後、劉備さんは僕たちに、弱い人間が苦しんでいるのを助けたい。みなが安心して、笑って暮らせる世界を作りたいと言いましたね」
劉備「はい……」
赤斗「曹操が目指すのは魏一国による天下統一です。曹操と同盟を組めば劉備さんの夢は叶わぬものになるでしょう。……諸葛孔明。あなたはどう思いますか?」
諸葛亮「……曹操さんの覇道の行き先を考えれば、残念ながら、風見さんの仰る通りになるでしょうね」
関羽「なにっ! どういうことだ朱里?」
諸葛亮「曹操さんが己一人の考え、そして理想のみを正義とし、天下統一を押し進めていく英雄だからです。だから、曹操さんが天下を取ってしまえば、桃香様の理想や夢は、霧散してしまうでしょう……」
劉備「つまり、曹操さんは私の事を、認めてくれないって事……?」
諸葛亮「はい……」
赤斗「だから考えてほしいのです。劉備さんの夢の為にも……」
劉備「……朱里ちゃん」
諸葛亮「……はい。呉と同盟を組みましょう」
赤斗「ありがとうございます。ただ……」
劉備「ただ?」
諸葛亮「恐らく呉の内部では、抗戦派と降伏派とに分かれているでしょう」
関羽「今になって何を言う!」
赤斗「だから、お願いがあるのです。降伏派を説得する為、諸葛孔明を呉に遣わせてほしいのです」
諸葛亮「は、はわわ。私ですか!」
関羽「そんな事ができるわけなかろう!」
趙雲「何故、朱里なのですかな? 呉には美周郎がいるでしょうに」
赤斗「確かに、呉には周瑜を始め多くの人材がいますが、抗戦派の周瑜が説得するよりも、彼女の方が適任だと思ったからです」
赤斗(三国志で孔明が呉の降伏派を説得したからなんて言えないな……)
諸葛亮「……桃香様。私を呉に遣わせてください」
劉備「朱里ちゃん…」
諸葛亮「お願いします桃香様。私が行って、呉の降伏派の人たちを説得してきます」
関羽「それはならん! 呉の計略かもしれんのだぞ!」
赤斗(相変わらずの石頭だな……)
そう思いながら赤斗は関羽を見る。
関羽「何だ!」
赤斗「いえ。何でもないです」
諸葛亮「桃香様」
劉備「……わかった。朱里ちゃん。気をつけて行ってきてね♪」
諸葛亮「はい!」
趙雲「ならば私も護衛として同行しよう」
諸葛亮「ありがとうございます星さん」
月「あのぉ、私と詠ちゃんも一緒に行ってはダメでしょうか?」
劉備「月ちゃん? うーーん。別に大丈夫なんじゃないかな♪」
月「ありがとうございます♪」
明朝、赤斗、恋、諸葛亮、趙雲、月、詠を乗せた船が呉に向かって出発した。
つづく
~あとがき~
呂です。読んでくださって、ありがとうございます。
真・恋姫†無双~赤龍伝~に出てくるオリジナルキャラクターの紹介
オリジナルキャラクター①『風見赤斗』
姓 :風見(かざみ)
名 :赤斗(せきと)
字 :なし
真名:なし
武器:花天と月影……二振りの日本刀(小太刀)。赤色の柄で赤銅の鞘に納まっているのが“花天”で、黒色の柄で黒塗りの鞘に納まっているのが“月影”。
本編主人公の少年。
身長168㌢。体重58㌔。年齢17歳。赤髪。左目は黒色、右目は輝く金色。
放課後に道場で古武術の達人である先生に稽古をつけてもらうのが日課だったが、ある日道場で黒尽くめの男に襲撃される。
その際、赤い光に包まれて恋姫の世界に飛ばされる。
死にかけていた所を、火蓮によって保護され“江東の赤龍”という異名を付けられる。
古武術 無双無限流を学んでおり、その奥義を使えば恋姫の世界の武将とも闘えることができる。
無双無限流には、『全ての奥義を極めしとき、その身に龍の力が宿る。』という伝承がある。
奥義には“疾風”“浮葉”“流水”“月空”“烈火”“絶影”“龍鱗”“狂神”などがある。
奥義の同時発動は可能だが、奥義単体の発動以上に身体に負担がかかる。
現在、奥義“狂神”を発動させて、龍脈の気が流れ込んだ影響で右目は金色に変化している。
好きなもの:肉まん
苦手なもの:海(泳げないから)
能力値:統率3・武力4・知力4・政治2・魅力4
オリジナルキャラクター②『孫堅』
姓 :孫
名 :堅
字 :文台
真名:火蓮(かれん)
武器:南海覇王……やや長めの刀身を持つ、両刃の直刀。派手な装飾はないものの、孫家伝統の宝刀。
孫策(雪蓮)たちの母親。
身長173㌢。腰まで伸びる燃えるような赤い髪の持ち主。
血を見ると雪蓮以上に興奮してしまう。
孫尚香(小蓮)には非常に甘い。周りの人間が呆れるほどに甘い。
この外史“赤龍伝”では孫堅は死んでいない。
好きなもの:娘たち(特に小蓮♪)と酒
能力値:統率5・武力5・知力3・政治4・魅力5
オリジナルキャラクター③『諸葛瑾』
姓 :諸葛
名 :瑾
字 :子瑜
真名:藍里(あいり)
武器:風切羽(かざきりばね)……火蓮から受け取った護身用の短刀。諸葛瑾(藍里)の実力が低いので、あまり役に立っていない。
諸葛亮(朱里)の姉。
諸葛亮(朱里)とは違い、長身で胸も大きい女性。髪は金髪でポニーテール。
温厚で気配りのできる性格で、面倒見も良い。赤斗の世話役として補佐につく。
一時は、自分たちとは違う考え方や知識を持つ赤斗に恐怖心を持っていた。
政治、軍事、外交と様々な仕事をこなすが、諸葛亮(朱里)には僅かに及ばない。
苦手なもの:酒(飲めるが、酔うと周りの人間にからむようになる)
能力値:統率3・武力1・知力4・政治4・魅力4
オリジナルキャラクター④『太史慈』
姓 :太史
名 :慈
字 :子義
真名:嶺上(りんしゃん)
武器:雷電(らいでん)……二本の小型の戟。
非常に勇猛かつ、約束に律儀な武将。銀髪レゲエの女性。
孫策(雪蓮)と一騎打ちして引き分けたことがある。
それ以来、孫策の喧嘩友達になっており、よく喧嘩をしている。
孫尚香(小蓮)や諸葛瑾(藍里)と仲が良く、孫尚香(小蓮)の護衛役をしている事が多い。
子供好きで、よく街の子供たちと遊んでいる。
弓の名手でもあり、その腕は百発百中。
好きなもの:子供
能力値:統率4・武力4・知力3・政治2・魅力3
オリジナルキャラクター⑤『司馬懿』
姓 :司馬
名 :懿
字 :仲達
真名:不明
武器:不明
黒尽くめの衣装を身に纏った、曹操軍の軍師。
曹操軍に属しているが、曹操からの信頼はないといっても良い。
色々と裏で暗躍しており、虎牢関では張遼を捕え、術により自分の傀儡にしている。
今は、魏から姿を消している。
能力値:統率5・武力?・知力5・政治5・魅力?
オリジナルキャラクター⑥『玄武(げんぶ)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:魏軍正式採用剣……魏軍に配備されている剣。
司馬懿の部下。
普段は何の変哲もない魏軍の鎧を身に纏い、普通の兵士にしか見えない。
しかし、眼の奥からは異質な気を醸し出している。
鎧の下には黒の衣を纏っており、素顔は司馬懿に似ている。
虎牢関では、鴉と一緒に張遼を捕えた。
能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力2
オリジナルキャラクター⑦『鴉(からす)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:爆閃(ばくせん)……司馬懿から受け取った回転式拳銃。
司馬懿の部下。
性格は軽く、いつも人を馬鹿にしているような態度をとる。
司馬懿と同じ黒い衣装だが、こちらの方がもっと動きやすい軽装な格好をしている。
寿春城では、孫堅(火蓮)を暗殺しようとした。
能力値:統率2・武力4・知力2・政治1・魅力3
オリジナルキャラクター⑧『氷雨(ひさめ)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:氷影(ひえい)……氷のように透き通った刃を持つ槍。
司馬懿の部下。
青い忍者服を着た長い白髪の女。
背中には“氷影”を携えている。戦闘時には全身からは氷のように冷たい殺気が滲み出す。
洛陽で董卓(月)と賈駆(詠)を暗殺しようとした所を、赤斗と甘寧(思春)に妨害される。
官渡の戦いでは、呂布の部下を連れ去り、それを止めようとした陳宮を殺害する。
能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力3
オリジナルキャラクター⑨『宮本虎徹』
姓 :宮本(みやもと)
名 :虎徹(こてつ)
字 :なし
真名:なし
武器:虎徹……江戸時代の刀工が作った刀。
赤斗の古武術の師匠。
年齢は50歳。実年齢よりも、肉体年齢は若い。
赤斗と一緒に、恋姫の世界に飛ばされたと思われる。
最初は河北に居て、それからは用心棒をしながら、色々と辺りを転々としている。
赤斗の修行をやり直した後、天の世界に戻ったようだが、詳細は不明。
赤斗曰く、『無双無限流の妙技を見せてやるっ!』が口癖で、その実力は呂布(恋)以上。
能力値:統率?・武力6・知力5・政治?・魅力?
※能力値は「5」が最高だが、呂布の武力と劉備の魅力は「6」で規格外。
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月と詠を救出した赤斗は、華琳のもとへ。
この作品は、基本的に呉√にそっては行きますが、他√に
脱線することもあります。また、主人公も含めてオリジナルキャラクターが出てきます。
未熟なため文章におかしな部分が多々あるとは思いますが、長~~い目で見てくださると助かります。