”敵は強大だが皆の力を合わせれば倒せないハズはない、みんなかかれーーー”
と、大号令をかけているのは”みんなのご主人様”こと北郷一刀その人、但しここは戦場でもなけれ
ば”敵”もいない・・・いや正確には襲い掛かってくる”敵”はいない。物言わぬ大軍がいや大群が
そこにはいた。梅雨が過ぎて誰も手入れをしていない裏庭の雑草集団である。そう今日行うのは夏の
風物詩でもある”除草作業”である。
”おらおらおらー”
掛け声勇ましく自慢の斬山刀で雑草を刈り取っていくのは”文ちゃん”こと文醜その人
斗詩「文ちゃん、ちゃんと根元から抜かないと、意味がないよ~。麗羽様も日陰で休んでないで手
伝って下さい~。」
相変わらず二人に振り回されている、常識人であるが為に苦労人の顔良こと斗詩。
麗羽「力仕事は猪々子さんの十八番じゃありませんこと。私はあえて猪々子さんに見せ場を譲って差し上げてますのよ。
おーほっほっほ。」
と、日陰でサボりながらのたまう我が道を行く袁家のお姫様こと麗羽(袁紹)。
斗詩「もう、こんな調子じゃご褒美のご主人様との小川で楽しむ半日券なんて夢のまた夢だよ。」
そう、ただでさえ誰も暑い日の下除草作業なんてやりたくもない。
そこで我らが”はわわ軍師”こと朱里(諸葛亮)が考えついたのが武将達を班分けして一番最初に
担当区域を終わらせた班にはご主人様といちゃつける券(権利)を賞品とする事である。
斗詩「ご主人様にゆっくり話聞いて貰えるいい機会なんだけどなぁ。あふぅ」
と、欠伸を一つ最近夢見が悪くて睡眠不足が続いている。
斗詩「しかし、暑いのに文ちゃんはいつも元気だなぁ。」
一人獅子奮迅状態の相棒を見ながら独り言っぽくつぶやくと
猪々子「・・・・・しー 斗・・・・・。」
離れた所から何かこちらに言ってるらしいのだがよく聴こえない。
『何を言ってるんだろう、あれ段々目の前が暗く・・・・』
そして目の前がブラックアウトになった。
猪々子「斗詩ーーーー。しっかりしろ斗詩ーーーー。」
駆け寄ってきて倒れた斗詩を揺り動かす。
斗詩「ううーん、あれここは。」
目を覚ますと寝台の上で横になった状態で額には濡れた布巾がかけられてあった。どうやら寝不足に加え暑さで気を失ってしまったようだ。
???「お、気がついたか、斗詩。猪々子が大変だったんだぞ。斗詩が死んじゃったって。」
と、声をかけてくれたのは皆が一緒に過ごしたくてしょうがないランキング現在1位の北郷一刀その人である。ちなみに2位は他人おごりが確定してる場合の食事時の恋。
一刀「猪々子が言ってたぞ、最近斗詩が元気ないって。」
斗詩「あの、ご主人様・・・私達3人ってここに居てもいいんでしょうか?」
一刀「急にどうしたの?居ても良いに決まってるじゃないか。」
斗詩「最近よく見る夢がありまして、それが・・・。」
言いかけて口を噤む斗詩
一刀「それが?どんな夢か話して貰ってもいいかな?」
促すように笑いかける。
斗詩「実は・・・水辺で愛紗さんに一撃の下に斬られる夢なんです。」
重い口を開いてくれた。
『確か官渡の戦いでそんなシーンがあったなぁ(正史では白馬の戦いらしいです、ハイ)』
と、思い出しつつ
一刀「斗詩は愛紗がそんな事をするような人間だと思うかい?」
優しく問いかけるような笑顔でそう尋ねると、
斗詩「いいえ、愛紗さんは理由もなくそんな事をするような人ではありません。でも・・・。」
一刀「でも?」
斗詩「そんな愛紗さんだからこそ斬られる夢を見る私に何か原因があるような気がして。それを考えると・・・」
一刀「あんまり眠れないか。」
『原因を考えてる間に”自分達がここに居る事が悪い”と思うようになったのか』
『自分がここに居てもいい理由を教えてあげることが解決方法かな』
と思いながら、
一刀「斗詩はさぁ何故蝉が鳴いてるんだと思う?後、蛍は何故光ってるんだと思う?」
斗詩「ご主人様?一体何を。えーっとそういう生き物だからでしょうか?」
急な一刀の質問にとまどいながらそう答えると、
一刀「天の国でその答えをこの歌の中で見つけたんだよ・・・ちょっと聞いてね。」
”蝉声有するは恋心歌う為 蛍光有するは恋に身を焦がす為
我声有するは君の名を呼ぶ為 我心有するは君を愛す為
我腕有するは君を抱きしめんが為 我の全ては君が為いざ伴に生きていかん”
朗々と涼しげに歌い上げると
”我生有るはあなたと生きる為 我在る場所はあなたの居る場所。
我ここに誓わん生在る限りあなたの側にいると”
その瞳に涙を湛えながらしっかりと自分の気持ちを込めて斗詩が歌い返してくれた。
一刀「わかった?斗詩がここに居ていい理由が。誰がどう思うかじゃなくて俺がここに居て欲しいんだ。気が多いと思われるだろうけど。」
しっかりとその腕の中に抱きしめながら
斗詩「はい、でも私もさっき言ったとおりにご主人様の側離れませんよ。」
胸に顔を埋めながら頬を染めてそう答えた。
一刀「願ったり叶ったりだねw」
微笑みながら顔を近づけてそのまま唇を重ねた。
そっと唇を離すと
斗詩「今度怖い夢見たらご主人様の閨に来てもいいですか?」
抱きしめられながら言うと
一刀「いつでも大歓迎だよ。一週間に一回は怖い夢見てねw」
更に力強く抱きしめて
一刀「早速怖い夢みたのかな?じゃあこのまま・・・。」
猪々子・麗羽「「斗詩(さん)は大丈夫か?(ですの?)アニキ(北郷さん)!!」」
ドアを開いて二人が駆け込んできた。
パっと離れた二人。でもしっかり服の裾を掴んでる斗詩。
余談だが・・・斗詩の夢見は良くなったが一週間に一回は悪夢を見るらしい。
-私の居場所はあなたの居るところ- 完
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