”敵は強大だが皆の力を合わせれば倒せないハズはない、みんなかかれーーー”
と、大号令をかけているのは”みんなのご主人様”こと北郷一刀その人、但しここは戦場でもなけれ
ば”敵”もいない・・・いや正確には襲い掛かってくる”敵”はいない。物言わぬ大軍がいや大群が
そこにはいた。梅雨が過ぎて誰も手入れをしていない裏庭の雑草集団である。そう今日行うのは夏の
風物詩でもある”除草作業”である。
”おらおらおらー”
掛け声勇ましく自慢の斬山刀で雑草を刈り取っていくのは”文ちゃん”こと文醜その人
『斗詩の為にもなんとか一番にならないとなぁ』
斗詩「文ちゃん、ちゃんと根元から抜かないと、意味がないよ~。麗羽様も日陰で休んでないで手
伝って下さい~。」
『姫も相変わらずだなぁまぁ最初からアテにしてないけどさ。』
麗羽「力仕事は猪々子さんの十八番じゃありませんこと。私はあえて猪々子さんに見せ場を譲って差し上げてますのよ。
おーほっほっほ。」
『まぁ適材適所ってこういうことなんかな?』
猪々子「この調子でご褒美のアニキとの”小川で楽しむ半日券”を斗詩にプレゼントしないとな。」
そう、ただでさえ誰も暑い日の下除草作業なんてやりたくもない。
そこで我らが”はわわ軍師”こと朱里(諸葛亮)が考えついたのが武将達を班分けして一番最初に
担当区域を終わらせた班にはご主人様といちゃつける券(権利)を賞品とする事である。
猪々子「アニキにゆっくり話聞いて貰えるいい機会なんだから。おらぁもういっちょう。」
と、気合を一つ入れて愛用の得物を振るう。
猪々子「しかし、こんだけ暑いと斗詩は大丈夫かなぁ。」
独り言っぽく呟きながら最近元気の無い愛しい斗詩の方を振り返ると
猪々子「斗詩ーーーーー 斗詩大丈夫ーー?。」
離れた所でフラフラしてる斗詩に声を掛けるのだが
そのまま斗詩が崩れ落ちるように倒れた。
猪々子「斗詩ーーーー。しっかりしろ斗詩ーーーー。」
駆け寄って倒れた斗詩を揺り動かす。
猪々子「アニキーーーーーっ!!斗詩が斗詩が死んじゃうよーーーー。」
倒れた斗詩を抱きかかえながら俺の方に走ってくる猪々子
一刀「猪々子とりあえずこの部屋の寝台に寝かせて。そして濡れ布巾を用意して貰って。」
風通しのいい部屋に誘導した後に斗詩の額に濡れ布巾を置きながら
一刀「日射病か熱中症かなぁとりあえず風通しのいい部屋で寝かせて額を冷やしてと。」
猪々子「アニキッ!!斗詩は大丈夫なのか?死んじゃわないか?」
と、俺の襟首を掴みながらガクガク揺さぶる猪々子
一刀「ま・待て落ち着けって俺が死んじゃう。」
なんとか落ち着かせると
一刀「斗詩が倒れた原因を何か知ってる猪々子?」
悲しそうに首を横に振りながら
猪々子「ううん、ここのところ斗詩調子悪そうなんだけどアタイが聞いても教えてくれないんだ。」
徐々にその瞳には涙が
猪々子「アニキィ、アタイが馬鹿だから斗詩は何も言ってくれないのかな。アタイじゃ斗詩の力には成れないのかな?」
今にも泣き崩れそうな猪々子を見て思わず抱きしめた。
一刀「わかったから・・・俺がちゃんと原因を聞きだして解決するから猪々子はこれ以上悲しい顔するなっ。そうじゃないと俺が悲しくなるよ。」
急に抱きしめられた事で驚いて泣き止んだ猪々子は俺の腕の中から顔だけ上に向けて
猪々子「アニキ、あのその・・・苦しいんだけど。」
頬を赤らめながらそう言った。
俺は慌てて腕から猪々子を解放して
一刀「あぁごめんごめん。だから猪々子はいつも通りの笑顔でいてくれよ。じゃないと今度は斗詩が猪々子の心配をする事になっちゃうよ。」
最後は照れ隠し気味に頭をクシャクシャ撫でながらそう言った。
猪々子「そうだな、アニキの言うとおりだな。んじゃアニキ斗詩の事よろしくな。アタイは草刈に戻るよ。」
そう言いながら作業現場に戻ろうとする猪々子の背中に
一刀「おう、任せとけっ。」
と声をかけた。
『へへっやっぱりアニキは頼りになるな。でも抱きしめられた時は驚いたけどそんなに嫌じゃなかったな。』
と思いながら、作業現場に戻ってみると目を疑うような光景が
麗羽「猪々子さん斗詩さんの具合はどうですの?」
と、”除草作業をしていた手を止めて”戻ってきた猪々子に訊ねた。
麗羽「猪々子さん?聞いてますの?」
信じられないものを見て思考が止まっていたが、我に戻って
猪々子「あぁ大事は無いけどアニキが看ててくれるって。任せとけって言ってくれましたよ。」
麗羽「そう、北郷さんがそう言うのでしたら大丈夫でしょう。猪々子さんちゃっちゃっと作業を終わらせて見舞いに行きますわよ。」
と、言いながら作業に戻る。
猪々子「はい、ちゃっちゃっと終わらせましょう麗羽様。」
『麗羽様どうしちゃったんだろう?まぁ早く終わらせるにこしたことないしな。』
そして作業を終わらせて斗詩が休んでる部屋に二人で行き
猪々子・麗羽「「斗詩(さん)は大丈夫か?(ですの?)アニキ(北郷さん)!!」」
ドアを開けて二人で駆け込むと。
パっと離れた二人。でもしっかり服の裾を掴んでる斗詩。そんな二人を見て
『あぁ斗詩元気が出たんだなぁ流石アニキ・・・でもなんだろモヤモヤするこの気持ち?』
その夜、皆が寝静まる時間に一人中庭に出ていく人影が
『アタイは斗詩がアニキに取られる事がイヤなのかアニキが斗詩に取られるのがイヤなのかどっちなんだろ?』
二人の光景を見た後から悩んでいた猪々子。
猪々子「待てよ・・・なんでアタイはアニキが斗詩に取られそうでイヤだって考えてるんだろ?斗詩がアニキに取られるのがイヤっていうのはわかるんだけど。」
猪々子「あーーーっもう悩んでたってしょうがないアニキに聞こう。うんその方が早い。」
一刀の部屋に向かう猪々子そこへ
一刀「あふっ猪々子か?こんな時間にここへ何の用だい?」
と、厠帰りの一刀とバッタリ
猪々子「アニキ・・・アタイって変なのかな?」
と、神妙な様子で話し出す猪々子に
一刀「俺の部屋で聞くよ、あぁ勿論誰もいないから遠慮しないで。」
相手を落ち着かせるような笑顔でそう言った。
俺の部屋で椅子に座らせて
一刀「それで?何で猪々子は自分の事を変だと思うのかな?」
話を促すように言いながらお茶を一口
猪々子「えっと・・アニキと斗詩がイチャついてるのを見て、胸の辺りが苦しいんだ。しかもそれが斗詩がアニキに取られそうでイヤなだけじゃなくてアニキが斗詩に取られそうなのもイヤなんだよ。」
”ぶほぉっ”とお茶を噴出して
一刀「み・見てたの?どの辺から?」
猪々子「ん?斗詩が袖掴んでたからイチャついてたのかなぁって思って。」
『あぁそこね、そこなのね』
内心ホッとしながら。
一刀「んーとそうだな、猪々子は俺と斗詩がイチャついてたら斗詩が取られそうでイヤだったのかな?」
猪々子「それはアタイが斗詩の事を好きだからに決まってるじゃないか。馬鹿だなアニキも。」
一刀「んじゃ今答えた内容を俺と斗詩入れ替えてみて。」
内心、喜びながらそう言うと
猪々子「入れ替える・・・斗詩とアニキがイチャついてアニキが取られそうでイヤその理由がアニキの事を好き・・・アニキの事が好き!?」
猪々子「そうか!!アタイはアニキの事が好きなんだ!!」
と、考え付いた猪々子を背中から抱きしめて
一刀「猪々子は俺にこうされるのはイヤ?」
猪々子「ううん、アニキに抱きつかれるのはイヤじゃない・・・昼間も実は嬉しかった。そうかアタイはアニキの事が好きだからイヤじゃなかったんだ。」
一刀「良かった。俺も昼間抱きしめたのは猪々子がたまらなく愛しくなって嫌われてたらどうしようかって思ってたんだ。」
猪々子「アタイがアニキを嫌うわけないじゃないか。優しいし頼りになるし斗詩の事だってちゃんとしてくれたし。・・・あっ。」
そして急に悲しい顔になったかと思うと
猪々子「ダメだよ・・・斗詩はアニキの事が好きなんだからアタイがアニキの事を好きになったら斗詩の邪魔をしちゃうよ。」
一刀「猪々子・・・大丈夫だよ、気が多いことと皆に対して常に本気なのが俺の長所なんだから。それに俺の事で二人の間が壊れるようなそんな絆じゃないだろ?二人の絆は。」
猪々子「さっすがアニキ。アタイと斗詩の事わかってるじゃん。」
一刀「これからも斗詩と一緒に俺の傍で笑っててくれるかい猪々子?」
猪々子「おう、あったりまえ・・・あふぅ。」
返事は最後まで言えなかった何故なら俺の唇が猪々子の唇を塞いでいたから。
猪々子「アニキィ・・自分の気持ちに気づかなかった馬鹿なアタイだけど・・・よろしくなっ。」
唇を離した後にそう言われた。その顔は笑顔だった。
一刀「おう、任せとけ。」
そして猪々子の手をひいて寝台へ・・・蜀の夜はまだまだ長い
私の居場所はあなたの居るところ -猪々子side- 完
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この作品は誤字脱字無知駄文製作者が送る”私の居場所はあなたの居るところ”を猪々子視点で創作したものです。キャラ崩壊口調違和感指摘等コメントと生暖かい視線でお願いします。