「それであなたは店長が良い人だと思ってしまったわけですね」
「悪い人ではないと思うんです。卵を破棄出来なかった理由も限界まで値段を安くしていたからだし、他の店はこの店の倍の値段です」
「おそらく店長は若い女性ばかりを看板娘として雇っていたのでしょう?あなたは店長のお気に入りだったと推測します。それが気に入らなくて奥さんはあなたにキツく当たっていた…」
「そうかもしれません…。店長が私に優しくすると奥さんの機嫌がますます悪くなってましたから…」
その時、店の裏のドアが開いて店長と奥さんが帰って来たようでした。
「すみません、あなたがこのパン屋の店長ですね?少しお話があるのですが…」
「はい、何のご用でしょう?お客様」
「この店の衛生管理に問題があると言う苦情が何件か寄せられてるようなので、立ち入り調査をさせていただきたいのです。もし問題が見つかれば営業停止の措置もやむを得ません」
「ま、待ってください!この店が潰れたら…」
「ええ、あなたが良い人だと言うのはこちらの店員さんが証言してくださいましたので、よくわかっていますよ?今回はただの事情聴取ですので、次回までに改善されていればこちらも何もしません」
ルークとステイシーが店から出て行くと、店長は頭を抱えていました。
「調査が入って悪い噂が流れたら、もう二度とこの街で商売をする事が出来なくなる…」
「大丈夫ですよ!改善したら営業停止にはならないってあの人も言ってましたから」
「悪い噂を流されて潰された店を何軒か知ってるんだ。立ち入り調査が来る前までは、客が来なくなる事はなかったんだが、もし調査が入ってしまったら、アラヴェスタ・タイムスの記事にされちまう!」
店長の奥さんがローラに尋ねました。
「あの事情聴取に来てた男って、いつもあんたを口説きに来てなかったかい?」
「そうですね…。毎日お昼に卵サンドを買いに来てくださってました」
「この前、デートに誘われた時にあんたが断ったから、当て付けでこんな事をしたんじゃないのかい?あんたのせいで良い迷惑だよ!」
「そんな事をするような人に見えなかったんですが…」
「あの男はあんたに気があるんだから、デートでもなんでもしてやりなよ?そしたらこの店の調査はやめてくれるだろうさ!」
「デートしたくらいで本当にやめてくれるんでしょうか…」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第351話。