ルークは更に誘導尋問を続けます。まるで他人のようにローラと話しているルークを見ていてステイシーはルークの記憶も消えてしまったのだと確信していました。
「なるほど、白身の割れ目から雑菌が侵入していたのに、そのまま卵サンドに使用していたのですね。他にも何かお気付きの点はありませんか?」
「えっと、焼きあがったパンを置く為の木箱があるんですけど、木箱の中に小麦粉の袋を切った紙を敷くんです。その袋を切るのも私の仕事なんですが、切った紙を敷いても反り返ってしまうので悩んで店長の奥さんに相談したら、裏返せば反り返らないって言われて…」
「小麦粉の袋を切った紙と言う事は内側は衛生的に問題ないでしょうけど、外側は雑菌がたくさん付着している可能性がありますね…」
「そうですよね…。私もそう思って袋の内側を上にして敷いていたんですが、反り返ったらパンを置きづらいから、絵のある外側を上にして敷くようにって」
「うーん、どうやらこの店の衛生管理はかなり杜撰なようですね…。調査が入れば一発でアウトでしょう」
「えっ、もし調査が入るとどうなっちゃうんですか?」
「営業停止命令が出ると思います。すでに食中毒を起こした患者が何人も出ているので」
「そんな!ここが潰れちゃうと困るんです。私もここのパン、食べてたけど大丈夫だったけどなぁ…」
「あなたもここのパンを食べていたんですか?まあ僕も食べてたようですが、胃が丈夫なのでなんともないですね…」
「売れ残ったパンを閉店後に店長からもらってたんです…。お客さんが買う時にも、それはやめた方が…ってどうしても言えなくて…」
「僕も卵サンドを買っていたそうですが、なぜあなたは何も言わなかったんです?」
「仕事がなくなってしまうと困るから言えなかったんです…。卵サンド以外をオススメしてもあなたは卵サンドばかり買うので…」
「ふむ、店長さんに厳重注意をして改善されなければ、営業停止命令に切り替えると脅しをかけておくかな?」
「そんな事されたら私…クビになっちゃいませんか?」
「こんな店で働いていても、いつか必ず問題が起きるので、もっと良い条件の仕事に就いた方が良いですよ?」
「でも不景気だから雇ってくれるところがあまりないんです…」
ここでステイシーが尋ねました。
「この店のアルバイトは長く続かず、すぐに辞めてしまうんですが、それはなぜだかわかりますか?」
「わかりません…。店長のおじさんは優しいんだけど、奥さんの方がキツい性格だからかな?失敗するとヒステリックに喚き散らしてて…。店長がなだめる感じでした。私がゆで卵の皮剥き失敗した時も店長は私の味方をしてくれてたから…」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第350話。