アークが出社してしばらくすると、ルークが書類を持ってやって来ました。
「結界石の試作品を拵えたんだけど、それに関する書類を作ったんだ」
「試作品?どんな効果の結界石なんだ。僕にも興味がある」
「今まで作った結界石の中でも一番ジョボいんだけどね。範囲は狭いし、持続時間も数分間」
「そんなもの役に立たないだろう?」
「そう思ってたんだけど、使い道によっては役に立つんじゃないかなぁと思ってさ」
「それをこの書類にまとめてあるんだな」
「お父さんが読みやすいように改行せずに敷き詰めて書いておいたよ」
「ふむ、助かるよ。改行なしで敷き詰めてある方が速読しやすい。他の書類は速読しづらくて無駄に時間を食うんだ」
アークは速読してハッと息を呑みました。
「こんな使い方があったとは…。ルーク、お前は天才だな?おそらくすでに僕を超えている」
「お父さんを超えたとは思ってないけど、替え玉受験をされない為にどうしたら良いのかなぁって思って考えたんだ」
「しかしこれをウィルスが承諾するとは思えないが…」
「お父さんの方がウィルスさんより地位は上なんだよね?」
「そう言う事になっているがな。僕をダシに使って脅しをかけてるのは知っている」
「お父さんに喧嘩売ったら後が怖いからね。前にお父さんが脅して追っ払った魔族たちも魔界で大人しくしてるみたいだし…」
「ああ、妙な真似をしたら潰してやろうと思って目を光らせていたんだが、何もして来なくて拍子抜けしたよ?最近、運動不足だからなぁ」
「この結界石ならすぐに作れるから、この方法を実用化出来るようにお父さんが動いてくれないかな」
「テオドールに頼んだ方が良いかもしれない。ウィルスでは適当な理由を付けて実用化を阻止しようとして来るだろう。これが実用化されたら、替え玉受験のやり方を変えなくてはならなくなる」
「僕が試験を受けた時、僕とマキャヴェリの中身が違う事に誰も気付いてなかった。つまり試験の見張りをしてる第一級魔術師もほとんどが実力の伴わない人たちって事だよ?」
…つづく
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
一応、新シリーズだけど本編の第3部・第346話。