叱るつもりで来たのにリリムに泣かれてしまって、アークは必死で慰めていました。
「私…生まれて来ても良かったのぉ?いらない子じゃなかったんだぁ」
「リリムの気持ちを何も考えてなかったと反省したよ。記憶を失う前のルークも家にいたくないと言っていたし、僕がそう思わせていたんだな」
「勇者様はここにいて良いんだって思わせてくれたから居心地が良かったのぉ」
「ゲイザーに僕は敵わないようだ…。ルークもゲイザーを慕っているし、ナタも同じだ」
「パパは私に無関心に見えたからぁ。勇者様はいつも私を見てくれてたわぁ。だから勇者様の事が大好きだったのぉ」
「決して無関心だったわけではないよ?」
「勇者様がいなくなってからフラウも元気がなくなっちゃったしぃ。女を捨ててる気がするわぁ」
「確かにフラウもやつれてきているな。以前はもう少し色気があったのだが…」
「フラウも五十になったしぃ。歳のせいもあるのかもねぇ」
「そう言えばナタに出会ってから、もう三十年も経ったのか…。僕は歳を取らないがナタはどんどん大人になって行くからな」
「ママが年老いたらパパはどうするつもりなのぉ」
「年老いても僕の愛は変わらないし、もうナタには吸魂能力は与えないつもりだよ?ルークにも与えていない。リリスやリリムのように不幸にしたくないんだ。お前には辛い思いをさせてすまないと思っている」
「私は幸せだったわぁ。ママもきっと幸せだったと思うのよぉ」
「ああ、ナタからもそう言われた。ナタは半分だけ前世の記憶が戻ってるようだよ」
「半分だけ戻るなんて事があるのぉ」
「僕は連鎖的に全て思い出してしまったけど、最初に記憶が戻った時は少しずつだったから、時間をかけて思い出すかもしれないな…」
「ローラの記憶は戻るのかしらねぇ」
「記憶を消去する魔法は簡単だけど、復元する魔法は存在していないからな。破壊は簡単だが創造魔法が難しいのと同じだよ」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第345話。