ルークの目から涙が溢れて来ました。ローラと愛し合っていた頃の記憶が蘇ったからです。もう二度とローラを抱けないかもしれないと思うと、哀しくて仕方ありませんでした。
「また一からやり直しなんだ。十五歳の頃、全くローラから相手にされてなかった、あの辛い日々をもう一回繰り返さないと」
「うにゅー?バブバブー?」
「何を言ってるのかわからないよ…」
「パパ!パパ!」
「あっ、パパって呼んでくれた」
赤ん坊のゲイザーから慰められて、ルークはいつの間にか泣き止んでいました。
「泣いてたらダメだよな。ありがとう、ゲイザー」
それからも毎日のように仕事の後はゲイザーを連れてローラのところへ通いましたが、ローラの記憶は戻る気配もありません。休日はデートに誘っても断られてしまいます。ルークは精神的にだんだん辛くなって来て、リリムにぼやきました。
「僕の記憶も消してしまいたい…。ローラと仲良く暮らしてた頃の記憶が蘇ると辛くて。この記憶がなければ、もう少しラクかもしれない」
「私のテンプテーションにかけたら消せると思うけどねぇ」
「そうか!リリム姉さん、僕にテンプテーションをかけてよ?」
「そんな事したら私がパパに叱られちゃうじゃなぁい」
「僕も記憶が消えた時の苦しみを理解したいんだ。すぐに魅了の術を解けば問題ないだろう?記憶が消えても僕はローラをもう一度好きになると思うよ」
「随分と自信があるみたいねぇ。魅了の術を甘く見過ぎじゃないのぉ?この術を破れるのは勇者様並の精神力が必要だからぁ」
「おじさんの精神力がどれほどのものなのか、この身もって体感してみたいんだ。ダメかな?仮に何かあったとしても、僕とリリムは血の繋がりはないし、何の問題もないだろ」
「問題はありまくりでしょ?血の繋がりがなくてもあんたは私の弟なのよぉ!」
「頼むよ…。この記憶を一時的にで良いから消したいんだ」
「過去の記憶が辛いってのはよくわかるわぁ。過去の記憶が幸せであればあるほど、それが壊された時のショックは大きいものよねぇ」
ルークに押し切られて、リリムはテンプテーションをかけました。ルークの中のローラの記憶が全てリリムに書き換えられてしまいます。ルークはまるでローラを見るような目で、リリムを見ていました。
「ああリリムは本当に可愛いなぁ。キスしても良い?」
「ダメよぉ?キスしたらあんたの寿命が縮んじゃうんだし、パパに叱られるの私なんだからねぇ」
…つづく
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
一応、新シリーズだけど本編の第3部・第337話。