二千五十年前、魔界。リリスの遺体の前で茫然自失状態のルシファーが剥ぎ取られた鱗を見つめながら、ある事に気付きました。自殺ならば鱗がこんなに剥がされているのは不自然だと思って、遺体をよく見ると首に残った縄の跡が二種類付いていたのです。
「これは…!先に絞殺されてから吊るされたのか?この角度で縄の跡が付くのはどう考えてもおかしい。しかもこの鱗に強い魔力があるのをなぜ知っていたんだ?教養の低い魔界のゴロツキに知る由もないだろう。教養の高い者はこんな愚かな事はしないはずだ」
その後ルシファーは天界のミカエルのところへ確認に行きました。怒りで執務室の壁にヒビを入れると、天界を潰すと啖呵を切って部屋を飛び出します。ミカエルは影の実力者であるメタトロンのところへ相談に行きました。
「あの蝋燭を見てみるが良い。リリスのものだっだが、途中で蝋燭の炎が消された」
「これは…!三千年以上も寿命がありますね」
「こっちがルシフェルのものだが、現在の寿命は残り五千年ほどになっておる。元々、八千年ほどあったはずだから、ルシフェルが三千年分の寿命をリリスに与えたのだろう、と推測出来る」
「確かに…人間のリリスが百年経っても変わらぬ美しい姿でいるのはおかしいと思っていました」
「この事を報告したのが良くなかった。わしが職務を放棄しておれば、こんな事にはならなかっただろう」
「そんなにご自分を責めないでください。あなたは何も悪くありませんよ?メタトロン」
「このまま行けばあと二百年もしないうちにルシフェルの寿命が尽きると報告してしまった」
「それで天界はリリスを抹殺したと言うのですか?リリスが殺された事をルシフェルが知ればどうなるかわからなかったのでしょうか」
「リリスをこれ以上、生かしておいても百害あって一利なしと判断されたのだろうな。ルシフェルが魔界に堕天したのも、リリスが原因だったが…」
「ルシフェルとリリスとの婚姻を認めていればこんな事にはならなかったでしょう」
「エリートのルシフェルと卑しい身分のリリスの婚姻を天界が認めるわけがなかろう?」
「別れさせようとあれこれ画策していたのは気付いていました」
「ルシフェルが口説いておったのに、リリスが誘惑したと言う事にされておったし」
「ルシフェルは一度こうと決めたら決して曲げない性分です。他の女性を妻にさせようとしても、ルシフェルが納得するわけがありません」
「ルシフェルが暴れておる。大勢、殺された者がいるな。あの辺りにある蝋燭の炎がたくさん消えた」
「どうすればルシフェルの怒りを止める事が出来るのでしょうか?メタトロンの知恵を拝借したいのです」
「この怒りを止める事は出来ないだろうな。わしより頭のキレるお主にもわからぬのだから」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第334話。