No.98839

身も心も狼に 第6話:お父さん…お母さん…

MiTiさん

…なんと言うか…久しぶり?
まじこい!SSに身が入っていたせいか他の作品がこんなにも遅くなってしまった…

注意として…話を合わせる為に御都合主義的な内容が含まれています…そこはご了承ください。

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2009-10-04 02:44:29 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:5272   閲覧ユーザー数:4809

魔界での、と言うより研究所でのルビナスの扱いは、

”実験体2号の我侭により人間界から連れてこられた一匹の狼”だった。

 

一緒に過ごせばルビナスの異質性が分ってくるのだが、

研究員のほとんどは、リコリスのことをただの実験・研究対象、

ルビナスにいたっては単なるペットという認識しかない。

二人のことを本当に気遣うものはごく僅かだ。

 

だが、これは結果的に良かったとも言える…

 

単なるペットと言う認識のお陰で、ルビナスは精密に検査されることはなく、

精々、衛生面などでリコリスに影響が出ないか?くらいのことしか調べられなかった。

 

もしも、精密検査を受けていれば彼女は真っ先に研究対象に選ばれてしまうだろう。

 

だが…それはある日の出来事から現実になってしまった…

 

 

ルビナスが魔界に着てから数日後…

 

白い壁、床、天上に囲まれた窓の無い一室。

リコリスとルビナスはその一室に一緒に過ごしていた。

 

部屋の中には寝るためのベッドと、人間界から持ち帰ってきた猫のぬいぐるみ以外に何も無い部屋。

 

こんな部屋だからこそ、リコリスとルビナスは同じ部屋でいられてよかったと思っている。

一人だったら詰まらなくて、寂しい思いをしたかもしれないが、

互いの存在がその思いを消し去ってくれる。

会話こそ出来ないが、思い考えは伝わっているので特に不自由は感じて痛かった。

 

が…やはり言葉を交わしたいと願うリコリスだった。

 

ルビナスはリコリスの全てに答えてくれるのだが、

リコリスとしては一方的に話しかけてる風に感じてしまうのだ。

 

「あ~あ…やっぱりルビナスちゃんと言葉を使って話したいな~…」

 

それは出来ないことだとわかっている…

いくらルビナスが人間の言葉を完璧に理解しているとはいえ、動物にそれを使えと言うのは無理だ。

だが…

 

「…うん…私も、ちゃんと言葉を話すことができたらよかった。

 もし出来てたのなら、稟とももっと話せたのに…」

 

「そうだよね~…稟くんルビナスちゃんのこと信じて、約束してたけど、

 どうして魔界に着いて来てくれたのか、その理由は流石に口で言わなきゃわかんないもんね」

 

「うん…それに…話が出来たらもっと稟を励ますことも出来たし支えることも出来たのに…」

 

「励ましたり支えるって…稟くんってなにか辛いことがあったの?」

 

「うん、あのね…………」

 

「……………」

 

過去に何があったかを教えようとリコリスと向き合う。

そして互いに見詰め合ってようやく気付く。

二人が言葉を使って会話していることに…

ルビナスが言葉を話しているということに…

 

「…えっと、ルビナスちゃん?」

 

「…私…言葉を…話して、る?」

 

それは、ルビナスが…ワーウルフである彼女が人間の言葉を話したいと望み、

ワーウルフとしての能力がそれを実現させた瞬間であった…

 

 

[ワーウルフ調査日誌①

 人間界の視察から、実験体2号固有名リコリスが一匹の狼を伴って帰館。

 先日、監視員の報告より、狼が人語を発したとの報告を受ける。

 精密検査の結果、件の狼がワーウルフであると判明。

 ワーウルフ、実験体1号期、当時の研究所付近に生息する生物の研究対象の1つ。

 前研究所消失に巻き込まれ、付近に生息するワーウルフは絶滅したと推測されていた。

 研究対象ワーウルフの発見により、以後実験体2号の実験・研究と並行し、

 ワーウルフ固有名ルビナスの実験・研究を開始]

 

 

ルビナスが人語を発したことで、精密検査が行われた結果、

驚くことに、絶滅されたとされる幻獣ワーウルフであることが判明してしまった。

 

研究員に実験・研究の対象とされてしまったルビナスは、リコリスとは別の部屋に移されてしまった。

 

ルビナスに宛がわれた個室には…何もなかった。

寝るための、明らかにペット用と言ったベッド以外は何もなかった…

 

暇を潰す道具も、会話する相手もおらず、ルビナスは心底寂しく思った。

今では、一日に数時間だけ許されたリコリスとの会合がルビナスにとっての唯一の憩いの時間となってしまった。

 

そんなルビナスの心情を無視するように(実際全く気にかけていない)ルビナスの研究は進められていく。

体液検査、肉体検査、魔力検査、etc…

正直自分の体を好き勝手調べられて嫌な思いしかし無かったが、

仮に抵抗したら何をされるか分らなかったので、極力我慢にってしていた。

 

だが、普通のものが見れば彼女が苦しんでいることは一目で分る。

苦しんでいることをリコリスは直ぐに見抜き、心配していた。

 

そして、これはリコリスのことを実の娘同然に想っている魔王フォーベシイにも言えた。

彼は自分と神王ユーストマが代表で行っていっる”ユグドラシル計画”の経過を見ることと、

同時に娘達の現状にも気を配っていた。

 

その気はルビナスにも向けられていた。

 

この計画、この研究には…魔力に関しては、本人の精神状態が大きく関わっていることは今までの研究からも分っている。

にも拘らず、今のルビナスの精神状態では研究に影響が出る。

いや、研究以前の問題として、こんな精神状態ではルビナス自身が持たない。

 

リコリスは、クローン元が娘ネリネであるだけあって、それなりの待遇を受けているが、

人間界からやってきたルビナスにはそんなものが無い。

 

娘同然の存在であるリコリスの、人間界で出来た友達。

そんな彼女をフォーベシイは放っておくことが出来なかった。

 

ルビナスを救うために、フォーベシイはとある人物達に声を掛ける…

 

 

ルビナスが個室に移されてから数日たったある日、ルビナスの下に二人の研究員が訪れた。

 

白衣を見た途端、またあの嫌な時間が来たのかと思ったが、

二人の姿を、その瞳を見た瞬間、ルビナスは感じた。目の前の二人が他の研究員とは違うと言うことに。

 

ルビナスが考えたことを肯定するように、二人は話しかけてくる。

 

「やあ、初めまして。ボクはハリエン、こっちは妻のマオラン」

 

「よろしくね、親しい人たちは私達のことをハリーとマオって呼んでるから貴方もそう呼んでいいわよ」

 

喋り方や醸し出す空気から、目の前の二人がルビナスと言う一個人に向かって優しく語り掛けてくれているのは分かる。

が…何の前触れもなく突然やってきた二人に、いきなり自己紹介をされて状況がいまいちの見込めないでいる。

 

「…えっと、私はルビナス。ハリーとマオはなんで私のところに?」

 

とりあえず自己紹介をしてから疑問をぶつけることにする。

 

「ああ。それはフォーベシイ…魔王様から頼まれてね」

 

「おじ様が?」(←娘同然のリコリスの友達と言うことでこの呼び方を許可されている。と言うか希望されている)

 

「ええ。実はね…」

 

そして、二人はフォーベシイからルビナスのことを頼まれたときのことを話していく。

 

 

一日前、とある一室にて…

 

「二人とも、よく来てくれた」

 

フォーベシイは親しい友人に向かって話しかけるような感じで語りかける。

対する二人、ハリーとマオも軽く頭を下げた後は同じように語りかける。

 

「お久しぶりです、フォーベシイ様。それで…私達に頼みたいことがあるとのことですが…」

 

「ああ…二人は今、ユグドラシル計画がどのような状況か知っているかい?」

 

「…いいえ、私達はもう…計画には、実験や研究にはもう関わりたくはありません」

 

「うん…それは分かっている。娘を失ってしまったのに、それでも参加してもらえるなんて思ってはいないよ…」

 

魔力総量の大きい者の中から選抜し”強化”することで、更に強い魔法を使役できる存在を作ろうとして、

その実験体に選ばれたのが、ハリーとマオの娘だったのだ。

 

最初は魔界の…いや、三界の未来を担う役目に選ばれたことに、親子揃って喜び誇りに思っていた。

辛く苦しい日々も、お互いに励ましあうことで乗り越えていった。が…

計画は成功せず、ハリーとマオは、二人にとって何よりも大切な一人娘を永遠に失うことになってしまった。

 

そんな過去もあって、本当ならば二人は今回の計画に関係する頼みも余り聞きたくはなかったのだが、

 

「今回は君達に実験や研究に参加してもらおうと言うんじゃないんだ。二人にはある子の世話をお願いしたいんだ」

 

「世話…ですか?」

 

「ああ。先日人間界の視察にリコリスが行ったんだけどね、彼女は一匹の狼と一緒に帰ってきたんだ」

 

「狼?」

 

「ああ。ほとんどの研究員は、まぁただの狼としか見ていなかった。

 だが、リコリスは違った。不思議なことに人間の言葉を完璧に理解していたその狼、名前はルビナスと言うんだが。

 彼女のことを本当の友人として接しているんだ」

 

「人語を理解すると言う時点で普通では無いと思いますが…」

 

「そうだね。だが、研究員は教育すればそれくらいはなるだろうという程度にしか考えていなかった。

 だが、その考えも彼らは改めることになったんだ」

 

「何があったんですか?」

 

「驚くことにね…その狼が人語を使いリコリスと会話したんだ」

 

「「!?」」

 

「それで調べてみた結果…彼女がワーウルフであることが判明したんだ」

 

ワーウルフ。前研究所で計画に参加していた二人は、その種族が計画に関わる研究対象であることを知っていた。

それが何を意味し、今回の呼び出しにどう関わるのか…大よその予想をつけた二人は確認を取る。

 

「と、言うことは…そのルビナスと言う狼は…」

 

「ああ…検査が行われた翌日から彼女は個室に移されてしまった…

 今まではリコリスと一緒の部屋にいたんだがね。

 ワーウルフと分かった途端、彼女を研究対象として扱い始めたんだよ…」

 

その言葉を聞いて、二人は過去を思い出し怒り顔になる。

かつて自分達も計画に参加していたが、このときも研究員には2種類いた。

実験体をまさにそれだけの存在としてしか見てい無いもの。

もう一方は、実験体であろうとも、彼女を一人の少女として接するもの。

計画を…強い力を扱える存在を創ることに成功させようとする欲は人を魅了し、

結果、前者のほうが多かったのだ。フォーベシイ、ハリー、マオは当然後者だ。

 

「それで…それでフォーベシイ様は何もなされなかったんですか?」

 

「そんなわけが無いだろう!だが、魔王という立場が我侭を振るうわけには行かないんだ!

 だからこそ、今君達に頼んでいるのではないか!!」

 

「…と言う事は」

 

「ああ。彼女、ルビナスのことを君達に一任したいのだ。

 身の回りの世話も含め、君達になら任せられると思うんだ。どうかな?」

 

実験体一号、彼らの娘も今のルビナスと似た立場であった。

相違点は、二人の存在。娘には自分達両親がいた。

だが彼女、ルビナスにはいない。となれば…二人の答えは1つしかなかった。

 

「その話、受けます。…いや、やらせてください!」

 

「…ありがとう…二人とも。ルビナスを頼んだよ」

 

 

「…と、いう事があったんだよ」

 

説明するハリーの表情は、心のそこからルビナスを想ってくれていて、

同時に、自分達にはこんなことしかしてやれないと言う申し訳無さが混ざっていた。

それを感じ取ったルビナスは二人に言う。

 

「ありがとう」

 

と…自分を想ってくれることの喜びと感謝、辛い立場でありながらもそこに立ってくれる二人に対する謝礼を込めて。

それを受けて二人は心からの笑みを浮かべた。

 

「それじゃぁ、これからよろしくねルビナス」

 

「それから…これは僕達の勝手な希望なんだが…ルビナス、君の義理の両親になってもいいかな?」

 

「!?」

 

「これは…娘を亡くしてしまった私達の我侭…

 あの娘としたかったことを、してやれなかったことを今度こそしたいという願望…

 たしかにそれもあるけど…もしかしたらそれが全てなのかもしれないけど…

 貴女のことを想うこの気持ちに嘘は無いわ」

 

否定の言葉への不安を感じながらも強く言い放つ。

だが…その不安は杞憂だった。

 

二人の言葉を来たルビナスは…涙を流していた。それは喜びの涙…

 

何もかもが未知であった世界、人間界へ一人飛ばされ、一人の少年、稟に救われ家族となった…

 

彼と過ごすことで新しい家族、稟の父と母、土見家の一員となれた…

 

彼と一緒にって楓や桜、その他多くの友人が出来た…

 

それから…新しく出来た家族が亡くなってしまった…

 

そして、懐かしき香りに導かれた先では…故郷と本当の両親をなくしていた…

 

何も無い部屋であっても、人間界で出来た友人、リコリスと共に暮らしていた日々も

 

自分がなんであるかを知ってしまってから、孤独で寂しい日々を送らされていた…

 

そこへ二人がやってきた。血は繋がっていないが、自分の親として、家族として…

 

だからこそ、ルビナスはその涙を止めることなく、その心を隠すことなく、

満面の笑みを浮かべながら言う。

 

「ありがとうハリー、マオ。これからよろしく…お父さん、お母さん!!」

 

喜び叫びながら飛びついてくるルビナスを、二人は優しい笑みを浮かべながら抱きとめた…

 

 

『お父さん…お母さん…』いかがでしたでしょうか?

 

こうして改めてルビナスのこれまでを振り返ってみると…

 

自分で書いていて思わず涙が うぅぅうぅ゜・(つД`)・゜・

 

だが!それを乗り越えて!!ルビナスに新しい家族が出来た!!!

 

登場しましたるはオリキャラ二人…

 

元ユグドラシル計画研究員であるハリエンことハリーと、

 

同じく元研究員であるマオランことマオのお二人。

 

容姿に関しては…読者の皆さんの想像にお任せします。

 

外見も醸し出すオーラも優しい二人と思ってくれれば…

 

年齢に関しては…外見からは余り判断できないかもです。

 

何せ、某”学生服を着ていたら違和感が感じられない一児の母”の両親ですからwww

 

 

さてさて…ハリーとマオがルビナスの義理の両親となり、

 

同時にルビナス専属の世話係となって以降、

 

ルビナスは、そして周りはどのように変わっていくのか?

 

次回お楽しみに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しみにといっておきながらも、彼女に待っているのは………


 
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