赤ん坊のゲイザーはアークのそばまで飛んで行くと言いました。
「私がいなくてもアーク殿とルークがいれば全て解決出来るでしょう」
「面倒な事は全部、僕とルークに丸投げして、お前は赤ん坊のフリをし続けるとは…。腑に落ちんな」
「私はもう死んだ人間なので、私に頼らないでください…」
「だったらなんでお前はあんなシナリオを残して死んだんだ!無責任だろう?」
「あれは突然、フッと思いついて書いただけなので、あとで破棄しようと思っていたのに急に死んでしまって破棄出来なかったんです」
「僕の仕事の書類の内容を見たなら、今がどんな状況か把握しているな?」
「時間さえあれば、もう少しアーク殿の仕事を手伝いたかったですが、ルークが目覚めるまでに私の記憶を消さなくてはならない」
「それはそうとルークの中にいる見知らぬ奴が目覚めているようだな。さっきから盗み聞きしている。奴も記憶を消した方が良くないか?」
「うーん、消さなくても問題はないでしょう」
「なぜそう思うんだ?」
「彼はそれほど悪質ではないからです。本当に悪質な人間は良い人ぶるのが上手いですから」
「確かにそうだな。ウィルスのように良い人ぶってる人間の方が遥かに悪質だよ?」
「仮に今の話を誰かにしたところで、赤ん坊が喋っただとか言っていたら、頭がおかしくなったと思われるのがオチでしょう」
縛り上げられて倒れているルークの姿のマキャヴェリは呻くように呟きました。
「ううっ…なんでこんなガキにまでバカにされなきゃならないんだ!」
「わかりやすいほど自分は悪人だと言う態度の人間は実は純粋で真っ直ぐな人だったりしますよ」
「俺はルークに勝ちたかっただけなんだ…。奴は全部、俺の欲しいものを持って行っちまう」
「ルークはそれだけの努力をしているんです。努力もせずに勝ちたいと望むのは傲慢ですよ」
「顔だって何度も何度も整形したんだ。なのに奴よりモテるようにはならなかった」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第288話。