ルークの姿のマキャヴェリのそばに赤ん坊のゲイザーが近付いて来ると、こう言います。
「人間は生まれた時の顔が一番美しいのです。整形を繰り返したあなたの顔は、まるで化け物のように醜くなってしまっているのでしょう」
「美形に生まれた奴に不細工の気持ちがわかるもんか!金で言いなりにしないと女も抱けないんだ…」
「アウローラも自分の顔が気に入らないといつも言ってますが、私には一番美しい顔に見えるのです。おそらくルークも同じ感覚で見ている事でしょう」
「エレンは金でも言いなりにならなかったのにルークには簡単に堕とせちまったんだ…」
「金で言いなりにしても心までは動かせませんよ」
「メイドもみんな辞めて行っちまう。昔は良かったのに今はセクハラだなんだで訴えられちまうし…」
「セクハラ防止法は私が進言してテオドールに作らせた法案でしたが、昔はメイドは何をされても文句すら言えなかった」
「文句言わないメイドもいるんだ!俺の事ずっと慰めてくれてた…。エレンにフラれた時も」
「ではそのメイドさんを大事にしてあげてください。大事にしていれば愛されます」
「メイドとは本気になるなって父上に言われてるんだよ?貧しい生まれの女が多いし…」
「ふむ、あなたも可哀想な人なんですね。父親の言いなりになって生きるのは辛いでしょう?私は二十歳で父上に反抗して家を出ましたよ」
「お前、どう見たって赤ん坊だろうが!」
「おっと、そうでしたね。こう見えても前世は五十七歳のおじさんだったんですよ」
「勇者ゲイザー、そろそろ記憶を消す準備を始めましょうか?」
「ええ、よろしくお願いします。ミカエル様」
ゲイザーはベビーベッドに横になります。ミカエルはゲイザーの体の上に手をかざしました。
「これで前世の記憶は消えたはずですよ」
「えっ、たったこれだけで終わり?本当にお父さんの記憶、消えてるのかな…」
「あなたの記憶も必要ならば消せますが、どうしますか?アウローラ」
…つづく
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
一応、新シリーズだけど本編の第3部・第289話。