深夜までアークの帰りを待ちましたが、仕事がひと段落したので保留の判子を押した書類だけ持ち帰って、家で作業する事にしました。
「お腹空いちゃったから、なんか作るねー。お父さんは哺乳瓶でミルク飲む?」
「ああ、それでいい。私も空腹だよ」
哺乳瓶を渡されたゲイザーは腰に手を当てて哺乳瓶のミルクを飲むと、ヒゲのように白くなった口元を袖で拭います。
「お父さん!赤ちゃんはそんなミルクの飲み方しないよ?」
「そうか…。こうだったかな?」
「そうそう!ちゃんと両手で哺乳瓶を持って、中年オヤジが一気飲みする時みたいに腰に手を当てたりしちゃダメだよ?」
飲みづらい哺乳瓶のミルクをあっという間に飲み干して、大きなゲップをしました。
「赤ちゃんは自分でゲップ出来ないんだけどなぁ」
「赤ん坊は色々と面倒だな。ゲップくらい自分のしたい時にさせてくれ…」
「こんな中年オヤジみたいな赤ちゃん嫌だ…」
「私もこの体は不便だから早く記憶を消したいよ」
「記憶を消してもお父さんだって思ったらおっぱいあげる気失せるわ」
「哺乳瓶のミルクでも構わないじゃないか?」
「ナタお姉さんが母乳の成分がどうのこうのって言ってて、粉ミルクは赤ちゃんの体に良くないからって、お母さんも同じ事言ってたのよ」
「アウローラが赤ん坊の頃は、フラウが母乳を毎晩絞って、病院に持って行って哺乳瓶に入れて、看護師たちが飲ませていたよ?」
「ああ、そう言えば私は未熟児だったって言ってたね」
「魔法医学のおかげで助かったが、仮に自然界で産まれていたら死んでいただろう」
「そっかぁ。普通に生きられない体だったんだね。それじゃゲイザーはこれから哺乳瓶で母乳を飲ませる事にするよ」
「フラウもそうしていた。母乳を飲ませる際の痛みに耐えきれなくて」
「そうだったんだ。私、痛いのにずっと我慢して母乳あげてた」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第286話。