ルークの家はマルヴェールにある一番家賃の安い集合住宅でした。そこからリリムの住んでいる高級住宅街に向かいます。
「あら、パパとルークじゃなぁい?いらっしゃぁい!」
「リリム、ちょっと僕の仕事を手伝って欲しいんだ。今夜アカデミーまで来てくれ」
「夜中にアカデミーで何するのぉ?」
「あとで説明する。お前の力が必要なんだ。なるべく手荒な真似はしたくないのでね?」
「ふーん。まあ別に暇だから良いけど、パパが私に頼るなんて珍しいわねぇ?」
「ゲイザーの書いたシナリオのオチがわからないから、僕なりに考えた方法でこの件は決着を付けるよ?ミカエルが来なければ良いけどな」
「おじさんのシナリオのオチは結局なんだったんだろ?前世の記憶は消えてなくなってるみたいだから、僕の息子のゲイザーに聞くわけにも行かないし」
「前世の記憶などない方が幸せだよ?僕は前世の記憶も全部蘇ってしまったが、精神的にかなりキツい…」
「そうだよね。自分の娘の乳を吸ってるなんて色々と精神的にダメージがありそうだよ」
「僕なんてミカエルの乳を吸っていたんだぞ?それと比べたらまだマシだろう」
「ああ、そうか。お父さん、転生してミカエル様が産んだって言ってたね」
「記憶がなかったアークエンジェルの頃は幸せだったよ?オズワルドの使い魔だった頃は生き地獄だったがな」
その後、アークはルークと一緒にアカデミーの外壁の周りに行きました。ルークは複雑な印を極細彫刻刀で壁に刻んでいます。
「夜までに間に合いそうか?ルーク」
「うん、即席タイプだから印は単純だよ」
「随分と複雑な印に見えるのだが…」
「闇市に張ってあったのはもっと複雑だね。多分、五年くらい前に張ったんだと思うけど、十年は持つようにしてあった」
「それで一ヶ月も二ヶ月もかかると言うのか」
「僕がやった場合だから、他の人だともっとかかってるかもしれない」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第219話。