ゲイザーがリビングのソファーに腰を下ろしたので、向かい側に座って話を切り出しました。
「それとこの前の結界石の取引なんだけど解約してもらおうかと思って…」
「なぜだい?あの契約はもう成立してしまってるから、解約するとなると手続きが面倒だよ」
「ローラにあげる為だと思ってなかったんだ。そうと知ってたらただであげたのに、おじさんが使うのかな?って思ってて…」
「君は正当な報酬を受け取っただけだよ?相場より安いから値上げ交渉したい!と言うなら、また別の問題になるが…。お互いに納得済みの取引だったからキャンセルは難しいだろうね」
「そんな事言うつもりはないよ!まだ僕は無資格だからお金取れるようなもんじゃないし…」
「君は未成年者だからアーク殿にもサインをしてもらったからね。その時になぜ君がお金を貯めているのか聞いたよ」
「そう言えば契約書の保護者のサインの欄が空白のままだったから、少し気になってたんだ」
「アカデミー卒業後にアウローラと住む為の家を買いたいんだろう?それなら娘の為の積立金のようなものだから、ちょうど君が十八になる頃に支払いが完了する」
「でもお金が足りないかもしれない。今住んでる家は毎月家賃を払うのが嫌だったらしくて、一括で買取りしたって聞いててお父さんが議長だった頃の貯金、ほとんど使い果たしたんだってお母さんが言ってた」
「うむ、でも月額制の借家なら百万あれば余裕で借りられるよ?今アーク殿が住んでる城下地区は少し地価が高いけど、地価の安い地域なら五十万もあればいける」
「お母さんが月額制は財産が残らないから損だって言ってた。毎月五万をずっと払い続けても自分の家にはならないから、一括買取りの方がお得だって」
「買取りできるだけの収入がある者は良いが、結局一括で払う為にローンを組む必要があるから、ほとんどの者は毎月の支払いが必要になるんだ。アーク殿は特殊な例だからな」
「お父さんもっと稼げるはずなのにミカエル様が邪魔してくるから自由にできないんだよ…」
「ミカエル様が邪魔をすると言うのは一体…」
「何かあったら抹殺されるから怖いって言ってたよ?」
「そうだな。地位が高くなれば問題が起きた時の責任も伴う。自由も効かなくなる」
「だから僕も目立たないように地味に生きようと思ってる。安月給でこき使われながら、ローラと幸せに暮らすよ?ミカエル様に抹殺されたくないし…」
「器用貧乏と言うやつだな。才能がある者が必ずしも成功するとは限らない。理不尽なものだ…」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第149話。