アークが風呂から上がるとローズの香りがモワッと漂いました。
「お父さん、これ見てよ?」
「ん?なんだこれは…」
「裏口入試でワイロを受け渡ししてた証拠の書類」
「くだらない…。僕には関係ない事だよ?こう言う事件に関わるとロクな事にならない」
「お母さんはどう思う?無能な第一級魔術師が増えると、高いだけで効果の低い魔法石を売り付ける悪徳商法が増えそうだけど…」
「私も前から気になってたのよ。試験の時にアルバイトで受付してたんだけど、筆跡鑑定の魔法でも引っかからないし、オーラ変換魔法まで使ってるから、見つけるのは困難ね」
「そんな事よりチケットの転売問題やレコードの海賊版の取り締まりの方が深刻な問題だよ」
「僕のレコードはもう全部回収したんだよね?店では見かけなくなったけど…」
「表向きにはな。裏で売買されてる。海賊版でも欲しがる者がいるからさ。音源が生歌ではなくレコードなので雑音が多くて音質は劣るのだけどね」
「あのジャケットも海賊版では同じの使われてるの?」
「絵は更に複製が簡単だ。音よりも絵の方が複製しやすい」
「ううっ…もうあのジャケットはこの世から消し去りたい」
「謎の少女エルと言う名で出ていたから言わなければお前だとはわからないよ」
「僕のクラスメイトはみんな僕だとわかってたよ」
「まあレコード制作者は未成年者に対する労働基準法を無視したとして、脅しをかけておいたから情報は漏らすまい」
「お父さんのおかげであの騒ぎはすぐ沈静化したんだね。ありがとう」
「でも、アーク。ルークの持って来たこの書類の件も深刻だと思うわ」
「うーん、軽く脅しだけかけておくかな…。明日テオドール国王に許可を得てから、連盟に行って総帥に直談判に行ってくるよ?」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第114話。