ナタは少し声のトーンを下げて、ゲイザーがいつもナタにしていた諭すような話し方をし始めました。
「あいつらはね、あなたを使ってロクな事をしようと考えてないの!どうしてわからないの?もっと頭の良い子だと思っていたのに…」
「お母さんが思ってるほど悪い人じゃないと思うよ?サルバドールもお母さんになんとか言ってやってよ」
「ルーク、お前の味方してやりたいのは山々なんだけどさ。僕もあいつらは悪い奴だと思ってる」
「お母さんに酷い事をしたのは謝ってたよ。怪我はどこもなかったし、僕たちがアラヴェスタに住む為の新しい家も用意してくれたんだよ」
「きっとあなたを懐柔する為ね。このお金の正体は貧しい国民から吸い取った税金よ?」
「こんな大金を貧しい人からどうやって吸い取るって言うの…」
「僕は毎朝アラヴェスタ・タイムスを配達する仕事してるけど、一部につき一ヶ月三十ジェニーだからさ、何百件も配達してんのに給料五万とかなんだぜ?」
「えっ!そんなに大変なのにたったの五万?」
「最近は夕刊も増やしたんだけど、あれは薄っぺらいし取ってる家少ないから給料も少なくて月二万。合計でたったの七万だよ?」
「そんなに苦労して稼いでたんだね」
「サルバドールはそれを全部、家の為に使ってくれてるわ」
「まあ乗馬免許でも取れば、もうちょい配達料の高い仕事も受けられるから、免許取得の為に来月から貯金しようかな?って思ってる」
「サルバドールは僕よりしっかりしているね」
「お前は良いよな?僕よりも才能があるし、もっと稼げる仕事もできるさ」
「ごめんなさい…。お金に目が眩んでた自分が恥ずかしくなってきたよ?」
「まあ僕もこの大金を見たら、お前と同じ事を考えちまったと思う。毎日汗水垂らして働くのがバカバカしくなっちまうからさ!」
「話がうますぎるなとは思っていたんだよ?」
「絶対に何かロクでもない事を企んでるんだから!お金はこっそり返して来てちょうだい?」
…つづく
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どうしても書きたくて書いた裏の続き、第55話。