ルークは何枚も書類に同じサインを繰り返しました。筆跡鑑定されたらアウトかもしれないと別の悩みも出て来ます。アークの筆跡を見た事がないので真似する事も出来ません。
「整った美しい文字を書かれますね。まるで教科書のお手本のような文字です」
「お、おかしいでしょうか?もう少し崩して書いた方が良かったかな」
「いえ、問題ありませんよ」
「この口座番号を開設する書類と言うのは…」
「それは給料日に振込みされる銀行口座の番号ですよ?手続きに不慣れのようですなぁ」
「すみません…。十年前にしていたのでしょうけど、忘れてしまいました」
ルークは自分の正体がバレないか冷や汗がダラダラ流れて汗をハンカチで拭います。
「いえいえ、気にしないでください。私も普段は秘書にやらせていて、記入法を忘れている事はよくあります」
「そ、そうですか。僕はずっとマルヴェールにいたのでアラヴェスタのやり方には疎くて…」
「そうですな。そのマルヴェールとはどこにあるのです?」
「獣人の国の事です。人間には場所を口外してはならない掟があって、詳しい住所は言えませんが…」
「住所不定ではまずいので、こちらで適当に部屋を用意します。別荘にでも使ってください」
「本当ですか?何から何まで助かります」
「ルシファー様が快適に暮らせるようにサポート致しますよ?」
「妻のナターシャにはどう説明しよう…」
「奥様も私たちが誠意ある態度で接し続ければ心を開いてくださるかもしれません。先日の非礼をお詫びしなくては…と思っていたのです」
「なぜあんな事を企んだんですか?」
「私も上の者の指示で動いていましたので…」
「あなたより上の者がいるのですね」
…つづく
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どうしても書きたくて書いた裏の続き、第52話。