女性は全力で否定しました。
「そ、そんな事はありません!」
「僕が調べてたのは前代未聞の無差別殺人事件を起こした犯人についての記事なんです。僕とよく似てるらしくて気になりました」
「た、確かに似ていますね。家に当時流行ったレコードのジャケットがあるんです」
「では犯人のルシファーはアークと言う名前でアイドルとして活躍していたのも、ご存知ですよね?」
「私の母が熱を上げててレコードは幼い頃から聴いてました。とても澄んだ優しい声の吟遊詩人だったので、私は子供心に何も知らず、ファンになってしまったんです」
「あなたのお母さんはルシファーの…つまりアークの悪口は言ってなかったのですか?」
「歌に罪はないのにレコードを強制回収されそうになったから、コレクションは隠してたそうです。ファンの間ではこっそり聴いて楽しんでる人も多いみたいですよ?」
「歌詞が狂気に満ちているとインタビュー記事には書かれていたのですが、家にはレコードがなくて聴いた事はないし、レコード屋を回ってもどこにも置いてなくて…」
「そうなんですね。母もレコードは地下室に隠してて、そこでこっそり聴いてて、歌も外では歌っちゃダメ!って躾けられてました…」
「アークの歌詞に対する率直な感想を聞かせてもらえませんか?悪口でも何でも構いません」
「きっとアークは苦しんでたんだと思います。でも誰かを救いたくてもがいていると感じました」
「そんな歌詞だったのか…。僕も聴いてみたいのですが…」
「家にレコードがあるけど、母には人に言うなってキツく言われてて…ごめんなさい!」
「あなたのお母さんに会って見たいので家に行っても構いませんか?」
「えっ…母にですか?」
「アークの悪口を言わない人を今まで一度も見た事がなかったので、会って話してみたいのです」
「それは…。多分、周りに合わせて悪口を言ってるだけじゃないかな?アークの名前は口にしちゃいけないって、暗黙のルールもあるし…」
「あなたの家に連れて行ってください。お願いします」
…つづく
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どうしても書きたくて書いた裏の続き、第14話。