ジンが右手に剣を持って振り払うと宿屋の周りは火の海になりました。騎士団員が恐怖で右往左往しながら逃げ惑います。
「手加減できないんだ。すまない!」
ジンが先に進もうと足を踏み出すと、包囲していた騎士団員が脇に退いて道を開けます。
「何をしている!奴を捕らえよ?やらぬなら減給処分とするぞ」
「あんな化け物に手を出したら、自分たちが殺される…。文句があるなら、お前がやれよ!」
指揮官の男の命令を誰も聞こうとしません。ジンとイノンドは街を抜けて行ってしまいます。
「それでも栄誉あるセルフィーユ王国騎士団の者か?この事はメリッサ様にも報告するから、お怒りに触れて解雇されても知らんからな!」
解雇の二文字を聞いて騎士団員たちは震えながらも跡を追いました。指揮官の男も跡を追います。拓けた草原の中までやって来ました。
「まだ追ってくる…。しつこいな!」
「騎士団のメンツがあるのでしょう」
「待ちなさい!どこへ逃げても追い回されるのだから、罪を償うんだ」
「俺は何も罪は犯してねぇよ?妖精は拐われたから取り返しただけだし、追っ手は殺しちまったけど、向こうも殺そうとしてたんだから、正当防衛が成立するだろう?」
「婦女暴行の件はどう説明する?言い逃れは出来んぞ!左利きの魔剣士…」
「婦女暴行なんか全くやってねぇのに尾鰭付けんじゃねぇよ!」
「メリッサ様が左利きの魔剣士から、暴行を受けたと言っていたのだ。あのお方が嘘をつくとでも言うのか?」
「は?メリッサがなんでそんな嘘つくんだよ」
「メリッサ様からお前を生きて捕らえよと言う命を受けている」
騎士団員はジンたちを取り囲んでジリジリと間合いを詰めて来ます。ジンは右手の剣を振り回しました。黒焦げになって次々と倒れて行きます。
「クソッ!殺したくねぇのに、どんどん死んで行く…」
「メリッサ様の為に…奴を捕らえなくては…」
「こいつら正気を失ってる。まともな思考できるなら、こんな状況で俺に襲いかかってこないだろ?」
「これがメリッサのテンプテーションの効果なのです。死を恐れぬ無敵の騎士団を作り上げたが、こんなのは異常としか思えない」
「ちくしょう!皆殺しにするしか逃げ切れる方法がないのか?」
…つづく
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昔、知り合いが某少年漫画に持ち込みして、編集の人にこき下ろされまくった作者の原作の小説。復刻版の第34話です。