フロントのそばで遊んでいたルリは騎士団員が入って来たので花瓶の裏に身を潜めました。宿屋の主人と話をしています。
「ウォーター・クレスと言う名の剣士二人連れが来たと言う通報があったのだが、何号室か教えてくれ?」
「はい、宿屋ネットワークでその名で宿泊する二人組に注意しろとありましたので怖くて…」
「妖精も一緒にいなかったか?」
「妖精もいました!珍しいのでよく覚えています」
「間違いない。左利きの魔剣士だ。恐ろしく腕が立つらしい。慎重に行こう…」
ルリは慌てて窓の方に回りました。イノンドが窓際に立っていたので、窓をコンコン叩いて開けてもらいます。
「大変だよ!騎士団員がジンを捕まえに来た」
「それは本当ですか?急いで逃げなくては…」
騎士団員はジンたちの隣の部屋に移動して、様子を伺います。ジンは隣の部屋で物音がしたので、口に指を立てて静かにするように合図しました。ドアを開けて外の様子を見ると、騎士団員はそこにはいません。ジンは紙に書いて筆談します。
「なぜバレたんだ?偽名を使ったのに…」
「前と同じ偽名を使えばバレます。要注意人物の名前として宿屋ネットワークに情報を流すので」
「思っていたより騎士団はやり手揃いのようだな」
「セルフィーユで軍師をしておられるオレガノ様が頭脳派なのです。国王は無能ですが、オレガノ様が有能なので、王国は安泰でした」
「どうやって逃げる?宿屋の主人もグルなのだろう?」
「おそらく包囲網が敷かれているので、強行突破するしかないかと…」
「またそれか…。もっとスマートなやり方はないのか?あまり死人は出したくない」
「同感です。あなたとは気が合う…」
筆談したメモ帳は机に置いたままで二人は鎧を着込んで剣を構えるとフロントを横切って宿屋の外に出ました。
「左利きの魔剣士に告ぐ!お前たちは完全に包囲されている。大人しく投降しろ?」
「ふぅ…右手は使いたくなかったが仕方ない」
「ん?お前は左利きのはずじゃなかったのか」
「右手に剣を持ってる時に戦った奴は誰も生き残らなかったからだろ?このイノンド以外は右手で戦った後に全員死んでるからな」
…つづく
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昔、知り合いが某少年漫画に持ち込みして、編集の人にこき下ろされまくった作者の原作の小説。復刻版の第33話です。