ジンとイノンドが立ち去った後に、オレガノが街の惨状を見に訪れていました。
「これは…一面焼け野原ではないか?こんな事が出来るとは奴は何者なんだ!第一級魔術師免許所持者には該当者はいなかったし、左利きの有能な騎士を探しても該当者はいなかった…」
「オレガノ様、これが宿屋に残されたメモ帳です」
「なんだこのミミズののたくったような汚い文字は…」
「あまりにも乱雑なので筆跡鑑定も困難を極めており、筆記試験の答案と照合しても特定できずにいます」
「そんな事まで計算づくでやってるのか?どこまで頭の切れる奴なんだ!左利きの魔剣士は」
「ディル・イノンドは名前も顔も割れているのに、なぜか左利きの魔剣士の顔を覚えている者が少なくて捜査は難航しておりますし…」
「特徴のない顔のようだな。イノンドは一度見たら忘れないインパクトがあるが…」
「似顔絵師に証言する者も人によって意見が違う為、出来上がった絵を見ても似ていないと、みんな口を揃えて言うそうです」
「ここまで私を苦しめた犯罪者は奴が最初で最後だよ?何としてでも捕まえなくては…。騎士団の面目が立たない!」
その頃、無事に次の街に辿り着いたジンでしたが、宿屋に泊まるのが怖くて悩んでいました。
「宿屋のネットワークとかあるなんて知らなかったよ」
「騎士団員ならばみんな知ってる事ですが、ジンジャー殿はまだ騎士団に入団する前ですからね」
「なんか手配書の絵の人相もますます目付きが鋭くなって極悪犯罪者そのものって顔になって来てるし…」
「しかしなぜか似ていませんね。似顔絵師の腕が悪いのでしょうか?」
こんな逃亡生活を何日も続けていたら、とうとう軍資金が底を尽きました。
「ヤバい…。もうお金がない!あんなにたくさんあったはずなのに…」
「アルバイトをして稼ぎましょうか」
「お前は顔が割れてるのにどうやってバイトを探すつもりだ?役所に行ったら取っ捕まるだけだろ!」
「役所ではなく商店街などの小さな張り紙を見て頼めばやらせてもらえる事もあります」
「ふーん、それなら俺もやってみようかな?」
…つづく
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昔、知り合いが某少年漫画に持ち込みして、編集の人にこき下ろされまくった作者の原作の小説。復刻版の第35話です。