ゴツゴツした岩だらけの高原を剣士のジンは無言のままで歩き続けています。その後ろを妖精のルリがヒラヒラ舞いながら追いかけて来ました。
「ねぇ、待ってよー!」
「うるさい奴だな…。クレスのところへ帰れ」
「ボクがいないと寂しい癖にー」
「勘違いするな。俺はお前なんかどうだって良いんだよ?」
「でもジンはボクの前世の人間の女の子の事は好きだったんでしょ?クレス先生から聞いたよー」
「お前みたいなチンチクリンに興味はないし、ルリはもっとボンキュッボン!のナイスバディーで性格も良かった…」
「クレス先生はボクが人間のルリと性格そっくりだって言ってたよー」
「どこが!ただのクソガキじゃないか…」
「またクソガキって言ったな!お前の方がボクよりガキじゃないか?クレス先生はジンと正反対の性格だから、大人っぽくて紳士的で優しいし、ボクは先生の事が大好きなんだー。きっと人間のルリもお前より先生の事が大好きだったと思うよ?」
ジンは左手でルリの小さな体を掴みました。ルリは小さな手でジンの大きな手の指をひっぺがそうともがいています。
「暴力反対!離せよ?」
「黙れ!このチビ…。握り潰すぞ?」
「えーん!だからボクはこんな奴嫌いなんだ」
「だったらなんでついて来たんだ?」
「クレス先生が遠くに離れてる方がもっと好きになるって言ってたからだよ?今頃、ボクが恋しくて先生は…ムフフ」
ジンはバカバカしくなって手をパッと離しました。ルリはそのまま上空高く舞い上がって、遠くに見えるチャービルの街を確認します。街の手前にあった白樺の林の中に降りました。
「ふぅ…、気持ちの良い場所だなぁ。ボクはこう言うところが大好きなんだー」
切り株に腰掛けて思いっきり欠伸をします。木漏れ日がチラチラ照らしていました。しばらくそのまま座ってウトウトしていると突然、影が覆ってルリの小さな体に太い指が巻き付きます。ジンは徒歩で時間をかけてチャービルの街までやって来ました。
「さぁ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!世にも珍しい生きた妖精だよー?そこのお兄さんも買った、買ったー」
街道脇で目をウルウルさせながら鳥籠の中に入れられたルリが、行商人に叩き売りされています。
「その妖精、オレが五百ジェニーで買うよ?」
「それじゃ、オレは五千ジェニーで買うから売ってくれ?」
…つづく
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
昔、知り合いが某少年漫画に持ち込みして、編集の人にこき下ろされまくった作者の原作の小説。復刻版の第19話です。