ジンは舌打ちすると、行商人に交渉しました。
「チッ!めんどくせぇ…。おっさん、そいつは俺の連れなんだが、返してくれないか?」
「悪いけどお金を払わないなら、この妖精は渡せないな?」
「勝手に取っ捕まえて売ってるだけだろが!」
「営業妨害するなら帰っとくれ?シッシッ!」
ジンは腰に提げていた金貨の袋を確認します。五十枚の金貨がありますが、旅の軍資金なので無駄遣いは出来ません。
「五万なら出せる。それでどうだ?」
「うーん、五万か…。十万なら考えても良いけど」
「十万とかボッタクリすぎるだろ!」
そこへ馬車が止まって、身なりの良い老紳士が中年の騎士を連れて、馬車を降りて来ました。
「その妖精、わしが五十万で買おうか?」
「五十万ですか?流石チャービル卿!お目が高い」
行商人は揉み手をしながら、老紳士に擦り寄りました。
「待てよ!そいつは俺が先に買ったんだ。邪魔するなよ?」
「は?五十万以上出せるなら、お兄さんに売るけどね」
「このクソ親父め…。金に目が眩みやがってちくしょう!」
中年の騎士が鳥籠を受け取ると、二人は馬車に戻ろうとしました。ジンは騎士の肩に手をポンと置きます。
「待てって言ってるだろ?その妖精は俺の…所有物なんだよ!」
「はぁ…、誰がお前の所有物だって?ふざけんな!ボクは誰のものでもないぞ」
「はて?この妖精殿はあなたの事を所有者だと思っておられないようですが…」
「とにかくそいつは返してもらう!」
「あなたが五十万支払うならば返してやれない事もありませんが、私も雇われの身ですので、主人には逆らえないのですよ?」
「だったら喧嘩でケリを付けようぜ?あんたも騎士なんだろ!」
…つづく
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昔、知り合いが某少年漫画に持ち込みして、編集の人にこき下ろされまくった作者の原作の小説。復刻版の第20話です。