アークは魔法で声帯を弄って声を低く変えてしまいました。
「ただいま」
「おかえり…って!アーク、声まで変わってるし」
「ファンには声変わりしたと言っておくよ?」
「その歳で声変わりするわけないでしょ!言い訳が苦し紛れ過ぎるわ」
「ナタは低くてダンディーな声が好みなのだろう?前に言っていたじゃないか」
「アークの高い声もそれなりに好きだったよ」
「それなりではダメなんだ。ナタの好み通りに変えるよ?」
「魔法で変えたってアークはアークなんだから無意味でしょ!」
「どうして怒るんだ?ナタが喜ぶと思って、ゲイザーそっくりに変えたのに…」
「おじさんの真似するのはやめてよ!せっかく忘れようとしてたのに、アークのせいで思い出しちゃって、毎日辛いんだよ?」
アークはソファーにナタを押し倒しました。軽く唇を重ねます。
「ゲイザーの生きていた頃の悲しい記憶は僕が忘れさせてみせるよ?」
「悲しい記憶なんかないよ?おじさんと一緒にいた時はずっと楽しかったもん」
「僕ではゲイザーの代わりにならないのか?」
「おじさんの代わりなんて誰もできないよ?どんなに魔法でそっくりに変えたって、アークはアークでしかないんだから」
「僕のままではナタから愛されないから、ゲイザーを真似して愛されたいと考えたのに、ゲイザーはもう死んでいるから、僕にはゲイザーを研究する事ができない」
「研究なんかしたって無駄だよ?アークにはアークの良いところがあるんだから、真似する必要ないでしょ?」
「僕の良いところはどこなんだろう?自分ではわからない」
「いっぱいあるじゃん?イケメンで歌が上手くて、優しくて気配り上手だし、仕事も出来て料理は上手い。悪いところ探す方が難しいよ?」
「だがそれのどれ一つ、ナタに愛される要素になっていないだろう?」
…つづく
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本編のパラレルワールドをシナリオにしてみました。ストーリー第106話。