アークはフラウを抱き締めたまま離そうとしません。フラウも抵抗せず、抱かれたまま話し続けています。

「なぜだ？僕は誰も傷つけないように接しているつもりなのに」

「女が不幸にされてしまう付き合ってはいけない男の職業って知ってる？」

「付き合ってはいけない男の職業？」

「美容師、バーテンダー、あと一つあるのよ」

「あと一つはなんだ？」

「最後の一つはバンドマン」

「僕が前にやっていた職業か…」

「その三つってすごくモテる職業なの。だから不安になっちゃうんだと思うわ」

「ファンサービスでハグをしていたのが、いけなかったのか？」

「だからもう離れて…お願い。こうしてると、あなたが既婚者だって…忘れてしまいそうになるから」

「僕はあなたから愛されてないわけではないんだな？」

「むしろ逆よ？愛してるから、こう言う事はしないで欲しいの」

「僕はあなたの事も愛してるから大事にしたいだけなんだ」

「あなたが誰に対しても優しく接してるのはわかってる。リズが死ぬ間際にキスをせがまれてしてあげたのも、サルバドールから聞いたわ」

「お喋りな子供だな…。おかげでナタを怒らせてしまったよ？」

「その話を聞いてあなたを嫌いになる事はないし、むしろ優しい人だなって思うんだけど、女としては複雑な心境なのよ」

「リズとキスしてたのは仕事だったからだよ？最後のキスはサービスのつもりだった。愛情など微塵も感じていない」

「仕事だってわかってても、嫌なものは嫌だと思うわ」

…つづく