ある朝の事でした。フラウとナタが同時に口を押さえて吐きそうになっています。ゲイザーはフラウの背中を、アークはナタの背中をさすってあげると、フラウは嬉しそうに言いました。
「もしかして…これがつわり?」
「本当ですか?フラウ。さっそく助産師に診てもらいましょう」
「なんかよくわかんないけど、めちゃくちゃ気持ち悪い…」
「ナタも体調が悪いようだから、アカデミーに行く前に病院に行こうか?」
アークに連れられてナタは病院に連れて行かれます。やる気のなさそうな医者がさも大した事ではないかのように言いました。
「妊娠しておられますねぇ」
「えっ、私…赤ちゃん出来ちゃったの?」
家に帰ってゲイザーに報告すると、腕組みをしたままゲイザーはアークを睨みつけています。
「まぁ!ナターシャちゃんも妊娠してたの?」
「おばさまも赤ちゃん出来てたの?」
「ええ、もうバッチリよ!」
「じゃあ、私の赤ちゃんとおばさまの赤ちゃんは学校で同じ学年になるんだねー?」
「アーク殿、ナターシャはまだアカデミーも出ていないと言うのに、避妊くらいしたらどうですか?」
「す、すみません…。あの頃は長い間ずっと…していなくて…、久しぶりにしたので…頭が回らなくて…、避妊の事を全く…考えられなくなっていたんです…。本当に申し訳ない!」
ゲイザーに負けてからアークはすっかり大人しくなっていました。相変わらず反対派に所属していて、ディベートではゲイザーと一進一退で争っていますが、家ではゲイザーに頭が上がりません。
「先ほどお配りしました、お手持ちの書類に目を通してください。死刑廃止制度に異議を唱えます!税金の無駄遣いであると、覆面騎士団員が行った世論調査の結果が出ております」
「ゲイザー君、反論をどうぞ…」
議長のユリアーノに促されて、ゲイザーが立ち上がります。
「囚人は強制労働により、食費や生活雑費などの経費を自力で稼がせています。税金は一切使われておりません。むしろ低賃金で使える労働力として、世の中の役に立っております」
議会の行われている大聖堂の裏ではリリムとミケーラが話をしていました。
「ねぇ、ミケーラ?あなたはどうして勇者さまの仲間になったのぉ?あなたの魔力ってかなりヤバイわぁ。セラフィム並じゃなぁい?人間の使い魔になりたがるレベルじゃないわよぉ?」
「ふふ、あなたと同じですよ?リリム。自分より優れた者がいたら惹かれてしまうものです」
「あはは!まさかミケーラも勇者さまに惚れちゃったのぉ?まぁ、気持ちはわからなくもないけど。負けず嫌いの私のパパに負けを認めさせるなんて、ただ者じゃないわぁ」
「私はいつも叶わぬ恋をしてしまいます。でもただそばにいられるだけで私は幸せです」
おしまい
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第157話です。