アラヴェスタ議会にマルヴェール代表としてゲイザーは参加しました。
「本年度の予算について意見のある者は挙手してください」
ゲイザーの反対派である自由平和党に所属しているアークが真っ先に手を挙げます。
「ルシファー君、意見を述べなさい」
「はい、今年度の予算に関してなのですが、前回の議会で高所得者に対する課税額をゲイザー様の意見で引き上げされていた額を引き下げます」
ゲイザーが素早く手を挙げます。
「…ゲイザー君、意見を述べなさい」
「高所得者の課税額は現在の額が適正だと思われます。低所得者の課税額を上げると予算が釣り合わなくなる為、引き下げる事に賛成は出来ません」
「ルシファー君、反論をどうぞ」
「低所得者の課税額は上げません。その代わりトーナメントくじを販売します」
「トーナメントくじ?」
他の議員が思わず声を上げて会場がどよめきます。
「意見のある者は挙手してから発言してください」
「トーナメントくじを販売するにあたって、闘技場にて選手登録を行えるようにします。もちろん僕も参加しようと思っていますが、優勝者には議長に昇格の権利と賞金を与えます」
「そんなくだらない茶番劇で議長に昇格するなど前代未聞だ!」
「鎮まりなさい!挙手なく発言した者は退場とします」
議長の鶴の一声でまた静寂を取り戻しました。
「トーナメントくじによって得た収益を税金の代わりに予算に加えると言う新しい改革を提案します」
ゲイザーは腕組みをしたまま沈黙を保っています。
「ゲイザー君、反対意見はありますか?」
「いえ、今のところありません」
「では今年度の予算は高所得者の課税額を減らし、トーナメントくじを販売する事に決まりました。次の案件に移ります」
議長は淡々と議会を進行していましたが、書類を持つ手が震えていました。テオドールはそれを面白そうに見ています。議会終了後、アークはテオドールに玉座の間へ呼び出されました。
「なかなか面白い議会だったよ?ゲイザーの奴があんなにあっさり折れるとはね。拍子抜けした」
「予想外の事態に対して長考に入ったのでしょう。下手な反論をすれば首を締める事になるからです。高所得者はゲイザーのやり方に腹を立てているから、課税額の引き下げとなれば賛成派に回る。低所得者は税金の引き上げには反対するが、ギャンブルならば喜んで投票券を買いに来ますよ」
「今までゲイザーの奴を言い負かせる奴がいなくてね、議会の時はあくびが出そうだったよ」
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第146話です。