ピーターはナタにゴシゴシ洗われて、泡まみれになりながら、ため息を漏らします。
「あいつ、誰かを殺す事に何の躊躇いもないんだ…。オイラも殺されかけたからな」
「アークがピーターを殺そうとしたの?」
「ああ、あれは本気で殺そうとしてる奴の目だった…」
「アークが人間になった日からなんか変なの。天使の頃は邪悪な波動は全く出てなかったんだけど…」
「今も心眼で覗いてやがるからな。オイラがナタにちょっかい出そうもんなら、殺しに来るかも知れねぇ」
「心眼ってお風呂の中まで見えるの?アークのエッチ」
「心眼は魂だけが見えるってやつさ?ナタの目の前では流石に殺さないだろう。ただ、いつ殺されるかわからねぇから、常に警戒はしてる」
お風呂から上がると、ナタは分厚い魔導書を本棚からたくさん引っ張り出して来ました。
「ピーターの呪いは今、解いてあげるからね。えっと苦痛を与える呪いは…と」
「うーん、あとご主人様の望みがわかる呪いもかけてあるんだよなぁ」
「ご主人様の望みがわかる呪い?そんな呪いもあるんだ。知らなかった!」
「ゲイザーの奴の望みがわかる。しかもそれには逆らえない…。逆らうと苦痛を与えられる」
「なんかすごく複雑な呪いっぽいね…。この本に載ってないかも?そんな呪い記憶にないし」
「まあゲイザーの望みってのが、ナタが幸せになるように…ってのだから、オイラは困らなかったが、他のご主人様だったら…って考えるとゾッとする」
「おじさん、そんなこと望んでたんだ…」
「ああ、ゲイザーは自分のことは何も望んでない。全部、他人の幸せばかり望んでるよ」
「やっぱりおじさんは勇者の素質を持つ者だから、他人の幸せしか望まないんだね」
「ナタの望みはどんな事だい?」
「私の望みは多分、誰からも好かれる良い子になりたい…かな」
「ナタは好かれてるだろ?」
「私、一生懸命良い子になろうとしてるのに、なんでか嫌われちゃうんだよ…」
「まあゲイザーも似たようなもんだ。どうすれば世界を救えるのかを考えてるようだが、ゲイザーが何かをすれば誰かが犠牲になるんだよ」
「おじさんは誰も犠牲にしてないと思うよ?」
「この前、金持ちの税金を少しだけ上げて貧乏な奴らの為に使ったら、税金を上げられた金持ちの奴らが怒ってただろ?」
「うーん、それは仕方ないと思うんだけど…」
「そう言う事なんだ。誰かを助けたら誰かに嫌われちまう。誰からも好かれるなんて不可能なのさ?」
…つづく
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第118話です。