公園内で悲鳴が上がり、阿鼻叫喚の嵐でした。子供が石を拾ってジョルジュに投げつけます。
「ば、化け物!これでも喰らえ」
ジョルジュはナタを守るように巨体を覆い被せて、石をぶつけられても耐えていました。
「やめて!ジョルジュに石を投げないで」
ユリアーノが現れると催眠魔法で人間たちを眠らせて、ナタとジョルジュを塔に連れ帰りました。
「やはり人間の街に行かせるのは、まだ早かったか…」
「どうしてみんなジョルジュをいじめるの?」
ジョルジュはナタに語りかけました。
「それはな、人間は弱いからだよ?」
「ジョルジュは優しくて何も悪くないのに…」
「弱い者は強い者を恐れる。だから弱い者同士で大勢で群れて強い者をいたぶるんだよ」
「ジョルジュが本気で怒ったら、あいつらなんかみんなやっつけちゃうのに…」
「そうだな。オレはそんなことはしないが、人間はそれが怖くてオレをいじめるんだ。矛盾しているが…」
「私、人間なんか嫌い!もうあの子とは遊んであげない!」
それから一年後、ユリアーノの塔で番犬の仕事をしているジョルジュの前に、ゲイザーが現れました。ナタがジョルジュに抱きつきます。ジョルジュはナタの頭の中に言霊で語りかけました。
「あの人間は変わっているな…。オレを見てもまるで怖がっていないようだが」
「うん、あの人は…勇者になれる素質があるから」
「まさか勇者の波動の持ち主だったとはな…」
「勇者の話は絵本でたくさん読んだことあるけど、勇者は本当に悪い奴しか倒さないの」
ここでジョルジュの昔話は終わりでした。
「そんなことがあったのですね…。ナターシャが人間嫌いになった理由がわかりました」
「お前は本当に変わっている…。アークの邪悪な波動に怯える事もない」
「私にはその魔力の波動と言うものがわからないからだと思いますよ?」
「アークがルシファーであることを知っていながら、仲良く出来るのが不思議だ。ピーターはそのことを知ってからアークを警戒している」
「つまりピーターはナターシャを守る為に人間になったのでしょうね。ピーターならば安心してナターシャのことを任せられます」
「魔物を信頼出来る人間は少ない。口では信じていると言いつつ、本心では信じていない人間が多いからな。ナタ以外のビーストテイマーはそんな奴ばかりだよ?あのユリアーノでさえ、我々に僅かな呪いをかけていたのだから」
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第113話です。