翼を失ったアークは徒歩でユリアーノの塔まで帰って来ましたが、想像以上に時間がかかってしまいましたので、昼から出かけたと言うのに帰った時はもう日が暮れていました。
「アーク、翼がなくなってる…」
「お待たせしました。申し訳ありません」
「歩いてここまで帰って来るの大変だったでしょ?私が一緒に行けば良かった」
「大丈夫です。人間になった時の為に地上を歩く練習もしていました」
「しばらくは不便に感じるかもしれないね…」
アークはナタを強く抱き締めます。そのままナタをベッドに押し倒して貪るように唇を奪います。
「もう抑えられない…」
「ちょ、ちょっと待って!まだ心の準備が…」
「いいえ、待てません」
「なんだかいつものアークと違う…」
「私は元々こう言う性格でしたよ?」
「そうなんだ?意外…」
「後悔していますか?私が人間になった事を」
「ううん、後悔はしてないけど、ちょっとビックリしただけ…」
その頃、ゲイザーの寝室の窓のカーテンが光り輝きました。フラウはこの日休暇を取っていたので、一日中イチャイチャしていたようです。
「おかしい、日が沈んだのに妙に明るいな…」
「カーテンに人影のようなものが見えます。なんだか怖いわ…」
「この塔は普通の人間には見えないはずだし、かなりの高さがあるからな。魔物だろうか?」
ゲイザーは素早く服を着ると剣を構えてカーテンに近付きました。フラウも服を着ます。フラウの着替えが終わったところで、カーテンを押して窓を一気に開けました。
「ミ、ミカエル様!どうしてここに…?」
「勇者ゲイザー。緊急事態なので、慌てて来てしまいました。お邪魔でしたらすみません…」
「いえ、大丈夫です。妻と一緒に寛いでいたところでしたから」
「ミカエル様、初めまして。妻のフラウです」
ミカエルがふらついたのでゲイザーは抱きとめました。
「どうかされましたか?ミカエル様」
「お綺麗な方ですね。私なんかよりずっと…」
「フラウ、ミカエル様は…。いや、なんでもない」
ミカエルはゲイザーにすがりつくように震えながら声を絞り出します。
「私にはもう…あの子を倒す事は出来ない。あの子には過去の記憶があります。同じ手は通用しないでしょう」
「まさか…アーク殿が鍵を使ったと言うのか?いつかこの日が来るのを覚悟してはいたが…こんなに早く来るとは…」
「ルシファーが…完全に復活してしまったようです。私にはもう止められません。勇者ゲイザー、この世界を救ってください」
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第79話です。