アークは世界樹の内部にある迷宮に来ていました。迷う事なく禁断の果実のなる樹の泉の前までやって来ます。この前とは別のケルビムが樹の番人をしていました。
「あっ、ルシフェル様。昇進おめでとうございます!」
「私はルシフェルではありませんよ?今はアークと言う名があります」
「アークエンジェルから一気にセラフィムに昇格されるなんて流石、ルシフェル様」
「その名で呼ぶのはやめてください。私はもう神に忠誠を誓う気はありませんので」
「今日は何の用で来られたのですか?まさか樹の番人の抜き打ちチェックに…」
「抜き打ちチェックに来るなら、バレないように何かに変身でもして監視対象に見つからないように来ます。ほら、今そこにいるヘビの正体が密偵なのかもしれませんよ?」
「はっ!このヘビがセラフィムだったとは…」
「冗談です。あれは本物のヘビですよ。見分けもつかないようでは昇格出来ませんね…」
「俺にはまだセラフィムに昇格する話は来そうにないです」
「金のリンゴをもらえますか?」
「はい、どうぞ!ルシフェル様」
「その名で呼ぶなと言ったでしょう?次に私をルシフェルと呼んだら…こうです!」
アークは槍を構えてわざと威嚇しました。ケルビムは慌てて額を地面に擦り付けるように謝りました。
「す、すいません!許してください」
「面を上げなさい。私は弱き者をいたぶる趣味はないです」
「伝説は聞いています。弱き者が命乞いをしたら決して殺さなかった…と」
「弱き者をいたぶるのは弱者のする事です。真に強き者は弱者を守ろうとする」
「あり難きお言葉です!ルシ…いえ、アーク様とお呼びすれば、よろしいでしょうか?」
「様はいりません。呼び捨てにしてください。私はあなたより階級が遥かに下なのですから」
「えっ、セラフィムに昇格が決まっているではありませんか?」
「私は天使を辞めて人間として生きて行くことに決めたのです」
アークは金のリンゴをかじりました。背中の翼がブワッと散って宙を舞います。
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第78話です。