ゲイザーは首を横に振りました。
「ミカエル様、私はチェスの駒に例えれば、一番弱いポーンの駒です」
「ポーンは使い方次第で最強の駒になります」
「確かにポーンにはアンパッサンなどの特殊なルールもありますが…」
「あの…、頭の悪い私にはアンパッサンの意味がわからないのですが、ゲイザー様は一体、何の話をされてるのですか?」
「チェスの話だよ?チェスの駒に例えるならフラウはクイーン、アーク殿はルークかビショップと言ったところか…」
「と言うことはクイーンはポーンより弱い駒なのですか?」
「いや、クイーンが最強の駒です。ポーンはプロモーションすると好きな駒になれますけど、プレイヤーはほぼ確実にクイーンになります」
「では、私はそんなに強くないのでクイーンではありませんね」
「ただ私は相手の意表をつく為にナイトを選ぶ事も時と場合によってあります。トリッキーな動き方なので予測が難しくなる」
「クイーンを守るのはナイトの務めなので、クイーンよりもナイトの方が強そうに思えるのですが…」
「チェスではキングよりもクイーンの方が強いんです。駒の中で唯一の女性であるクイーンが一番強いと言うのは、ある意味…真理をついているように私には思えるのです」
「女性が一番強い、真理…ですか?」
「どんなに強い男でも愛する女性には敵いませんから」
「勇者ゲイザー。あなたは今はポーンですが、英雄となればクイーンに化けるでしょう」
「私にはクイーンに化けるほどの実力はありません。せいぜいナイトが良いところでしょう」
「あなただけが頼みの綱なのです。ルシファーに覚醒したあの子を倒せるのはあなたしかいません…」
「私にルシファーを倒せるか今は自信がありません。出来れば話し合いで解決したいところですが…」
「私もルシファーを話し合いで説得しようと試みましたが、あの子は一度こうだ!と思い込むと、突っ走る癖があるのです…」
「確かにアーク殿は少しそう言うところがありました」
「でもあなたならあの子を説得できるかもしれません」
「私のような弱き者が世界を救うなどとは荷が重い…」
「あなたは弱くなどありません。勇者とは強き心の持ち主のことだからです。あなたならば必ずこの世界を救えると私は信じています」
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第80話です。