突然、ナタが部屋から飛び出して来たので、アークはナタの跡を追いかけました。洗面所に駆け込んで今にも吐きそうになっています。
「いけません!ナターシャ様。長寿の薬を吐き出しては…」
鏡に映ったナタは口を手で押さえて吐きそうになるのを必死で抑えていました。アークはナタの背中を優しくさすりながら言い聞かせます。
「そのままゆっくり飲み込んでください」
ナタがゴクリと飲み込むとアークは台所からレモンとハチミツをお湯で割った飲み物を持って来ます。
「ううっ、口の中が苦くて気持ち悪い…」
「お口直しにこれをどうぞ」
「もうこんな薬、一生飲みたくないよー」
「十年後にまた飲まなくてはなりません」
ゲイザーはナタの部屋から出て来たティターニアにお礼を言いました。
「ナターシャを説得してくださってありがとうございます。ティターニア様。私だけでは説得は不可能でした」
「あの年頃の娘には思春期特有の悩みがあります。私で良ければナタの話し相手になれますので、時々ナタを連れて妖精の国に遊びにいらしてくださいね?」
「はい、ティターニア様の慈愛に満ちた御心に感謝しております。今後もナターシャの事をよろしくお願い申し上げます」
ゲイザーが自分の部屋に戻ろうとすると、何やら違和感に気付いて、取っ手を回してから剣を構えて一気にドアノブを引くと、剣を突き出しました。ドアの上からガラクタが降って来たので、剣で振り払います。
「あーっ!ゲイザーめ…。よくも躱したな?」
「誰がこの様な罠を…」
「その罠を作るのに何時間かかったと思ってるんだ!ボクの苦労を返せ?」
「その様子ではこの罠を仕掛けたのはパック殿ですか?私は何かパック殿の気に障る事でもしたのでしょうか…」
「次こそは…絶対にお前をボクの作った罠に嵌めてやるからな!覚えてろよ?」
「私はパック殿になぜ嫌われてしまったのだろう…?」
パックが飛び去って行くとティターニアがクスクス笑いながら言いました。
「勇者ゲイザー、パックは大好きな人間にしかいたずらはしないのですよ」
「ではあれはパック殿の好意の表れなのでしょうか?」
「ええ、パックはきっとあなたの事が大好きなんです」
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第70話です。