No.975887

新ビーストテイマー・ナタ65

リュートさん

書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第65話です。

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2018-12-07 05:15:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:85   閲覧ユーザー数:85

ユリアーノは書斎の鍵を開けて背表紙に見知らぬ文字で『近くて遠い場所』と書かれている魔導書を持って来ました。

 

「これは発禁になっている魔導書で、調合法は第一級魔術師内でも極秘扱いになっています。紙には書き写さず、記憶だけして欲しいのですが、かなり複雑なので記憶するのは困難でしょう」

 

「十年後に私がそれを間違わずに調合するなんて無理です」

 

「暗号にして残すなら大丈夫です。ただし誰でも簡単に解けるような暗号ではダメですが…」

 

「そんな複雑な暗号、私には解ける自信がありません」

 

フラウが困り果てていたので、ゲイザーが請け負いました。

 

「暗号は私が作りましょう。十年後でも解ける自信はあります」

 

「この魔導書はナターシャに遺すつもりだったから、いざとなったらナターシャに解読させなさい。ただし、妖精の粉の抽出法はここには載っていないから、今からよく見て覚えてください」

 

ゲイザーはユリアーノの教える手順を紙に書いて暗号を作りました。フラウも真剣に目で見て覚えようとしています。

 

「随分と温度調節が面倒なのですね」

 

「これを間違えるとちゃんと抽出されない。面倒だから、みんな妖精を無理やり縛り上げて瓶詰めして、酒を流し込んで溺死させたりする」

 

「人間はなんて酷い事をするのか…」

 

「他の者の命を奪ってまで、長生きしたいとは私は思いませんけどね」

 

「私もユリアーノ様と同じ意見です」

 

「だからお前たちにだけこっそり教える事にした。この調合は誰にも教えてはいけないよ?」

 

「はい、決してこの事は他言致しません」

 

「私は人間が嫌いだった。だから人間をやめてここでナターシャとずっと一緒に暮らすつもりだった」

 

「私もそうしたいと考えた事が何度かありました」

 

「でもナターシャは私ではなくゲイザー殿を選んで出て行ってしまった…」

 

「ユリアーノ様の大事な弟子を連れ出して、申し訳ありません」

 

「今ではなんとなくわかるんですよ。ナターシャがなぜあなたを選んだのか、がね」

 

…つづく


 
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