ティターニアはほんのりピンク色に染まって、まるで温泉に浸かってるような気持ち良さそうな表情で、鍋で煮詰められています。
「温度は…大丈夫ですか?ティターニア」
「ええ、ちょうど良いわぁ。ユリアーノ」
「ナターシャの寿命が尽きるまでに長寿の薬の調合は間に合うだろうか…」
ゲイザーが行ったり来たりしながらアークの帰りを待っていると、髪の毛が路上ライヴ中のように爆発したアークが帰ってきます。
「片道三時間の距離を一時間半で飛ばして来ました。ナターシャ様の寿命は残り六時間半ほどだと思われます」
「現在二十三時半なので朝六時までですか…」
「無理やり粉を叩き出せば早いのだが…」
「それはやめてください…。王妃様の身に何かあったら国王様から叱られます」
「すでに五時間半ほど煮込んでますが、ティターニアの体調が崩れたら、一旦抽出をやめないとダメですし…」
「私なら大丈夫ですよ?朝までこうしていれば良いのでしょう」
そこへ執務を終えたフラウがユリアーノの塔にやって来ました。
「おお、ちょうど良かった!フラウ殿、今から長寿の薬の調合を教えるから、覚えておいてください」
「えっ、私が長寿の薬を調合するのですか?」
「今、作っているのは十年分の寿命を延ばす薬ですが、ナターシャが二十六になると寿命は尽きてしまう」
「二十六で亡くなるのは早過ぎますね…」
「ナターシャが二十五になったら、また長寿の薬を調合して飲ませてください。私はおそらくその頃にはもう生きておりませんので…」
ゲイザーはふと疑問を抱いて尋ねました。
「ユリアーノ様も長寿の薬で寿命を延ばされてはいかがです?」
「それは出来ない…。長寿の薬の材料である妖精の粉は妖精の生命そのものだから」
「妖精は死なないと聞きましたが…」
「妖精もいずれは死ぬよ?それが人間よりも長くて、病気や怪我などしてもすぐに治ると言うだけなんです…」
「なるほど、私は妖精を誤解していました。ティターニア様はご自分の命をナターシャの為にわけてくださっていたのですね」
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第64話です。