ゲイザーがフラウの待っている部屋に戻って来ると、フラウはもじもじしながらゲイザーの腕に自分の腕を絡めて上目遣いで見つめました。
「まだ起きていたのですか?先に寝ていて構わないと言っておいたのに…」
「どうしても眠れなくて…。アークとのお話はどうでしたか?」
「頭が痛いです…。ミカエル様に頼まれたとは言え、私にはどんな手を講じても、ルシファーを倒せると思えない…」
「ルシファーと言うのはアークの中に封印されていると言う悪魔でしたっけ?」
「はぁ…、このままではルシファーが復活してしまうのは時間の問題です。無理やりナターシャと別れさせても上手く行くと思えませんし、私はナターシャを賭けたアーク殿との戦いに一度敗北してしまったので、二人の交際に口を出す権利はもうありませんからね」
「あの時、ゲイザー様はわざと負けてアークにナターシャちゃんを託したのだと思っていました」
「私はあの時、本気で戦っていましたよ?手加減して生き延びられるような、生ぬるい対戦相手ではありませんでしたし、十年前の戦いでフォン様が私に敗北なさった時も、こんなやるせない気分だったのでしょうか…」
「ゲイザー様は歳を重ねるごとにフォン様に似てきてます」
「元アラヴェスタ国王ごときを倒したくらいで英雄だと祀り上げられて、調子に乗っていた自分が恥ずかしいです。私の倒すべき本当の敵は魔界の王ルシファーだったなんて…」
「ゲイザー様なら必ず倒せると信じています」
「無理ですよ…。ミカエル様ですら何千回も挑んで倒すのがやっとだった相手なのに、私などが何万回…いや、何億回挑んでも勝てるわけがありません」
「ミカエル様は、そんなにお強いのですか?」
「どんぶり勘定ですが、私の戦闘力が仮に十万だとして、ルシファーは戦闘力百万くらいでしょうね。アーク殿は現在、前世の戦闘力の十分の一だとミカエル様が仰ってたので、今は私とトントンですが、覚醒後はどう転んでも倒せる気がしません…」
「ルシファーの強さはわかりました。ミカエル様の強さはどのくらいなんですか?」
「推定ですが、おそらくは五十万を超えていると思われます。それでもルシファーには遠く及ばない。正確な数値はわかりませんが…」
「そんなに差があるのですか…」
「ミカエル様と謁見後から、ルシファーを倒す手を何万通りも考えていますが、起死回生の一手が何も出てこない…」
「ゲイザー様でもどうしようもないなんて…」
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第41話です。