No.96344

~薫る空~26話(洛陽編)

長いこと投稿できずにすみませんでした(´・ω・`)
ようやく連合入りです。

しかし軍議までにもう二つ三つイベント起こしたい作者。

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2009-09-20 12:06:33 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:5635   閲覧ユーザー数:4416

 

 ――そして、日は経ち、各地の諸侯は動き出す。

 

 先日までは何も無かった荒野。季節によっては雪が積もるような場所。そこにはそれぞれの陣営が並んでいた。

 

【桂花】「華琳様、見えてきました。」

 

【華琳】「えぇ。さて、どの程度集まっているのかしら。」

 

【秋蘭】「西涼の馬騰、北の公孫賛、呉の孫策、冀州の袁術などが集まったようです。それから、最近になって勢いを増している劉備も来ているようですね。」

 

【華琳】「そう、劉備が……。黄巾のときの借りを返すいい機会ね。」

 

 華琳たちもまた、そこへ向かっていた。

 

 各々の旗印が見え始めた頃、正面に仁王立ちする人影が見えた。

 

【袁紹】「おーーーほっほっほっほっほ!!ずいぶん遅い登場ですのね、華琳さん!遅刻ですわよ!ビリですわよ!!ドンケツですわよ!!!!」

 

 高笑いが大陸に響き渡る。

 

【華琳】「薫、天幕の準備をして旗を立てて来なさい。諸侯に私達の存在を知らせるわよ。」

 

【薫】「はーい」

 

 薫がさっさと前へと走っていき、兵達の指揮をする。

 

【袁紹】「無かったことにするんじゃありませんわ!!!」

 

【薫】「っ~~~!耳痛……」

 

【華琳】「うるさいわね……。」

 

【一刀】「あれ、誰だ…?」

 

【秋蘭】「これだけの面子を集めた張本人だ。」

 

 秋蘭の言葉を聞いて、俺は高笑いの主と秋蘭の顔を合計六往復視線を動かした。

 

【秋蘭】「気持ちはわかるがな……残念ながら事実だ」

 

【一刀】「…予想GUYです」

 

【春蘭】「北郷!何をしている!さっさと天幕を張るぞ!」

 

【一刀】「動じないな…春蘭」

 

【秋蘭】「姉者はいつも通りさ」

 

 既に悟りでも開いているように秋蘭は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 袁紹がなにやらわめいている間に天幕を張り終え、華琳達はそれぞれ各地の陣営を回っていた。

 

 華琳達が陣中へと近づくと、やはりという様子で見張りのものが待ったをかける。

 

【???】「待て!」

 

【薫】「ん?」

 

 華琳の前を歩く薫がその声に反応する。

 

【関羽】「貴様ら…ここが劉玄徳の陣中と知って……曹操殿!?」

 

【華琳】「あら、久しいわね関羽」

 

【薫】「ん?知り合い?」

 

 黄巾平定の時、呉にいた薫が二人の知り合う場面を知るはずも無く、また関羽が薫の存在を知るはずも無かった。

 

【関羽】「曹操殿とはしらず、失礼いたしました。」

 

【華琳】「ふふ。いいのよ、それより劉備と話したいのだけれど」

 

【関羽】「は。しばしお待ちください」

 

 関羽はそういうと、代わりの見張りを置いて陣中へと消えていった。

 

【琥珀】「………………」

 

【桂花】「琥珀?どうかしたの?」

 

 遠ざかる関羽をじっと見ていた琥珀に桂花は声をかける。

 

【琥珀】「……(フルフル)。なんでもない。」

 

 首を振って琥珀はそういった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【華琳】「久しぶりね。劉備」

 

【劉備】「はい。お元気そうでなによりです。曹操さん」

 

 少しして、戻ってきた関羽に案内された華琳たちは劉備のいる天幕にいた。

 

 今回の連合に自分達も参加すると劉備に伝え、現状での情報を交換する。

 

 この後、軍議が行われるようだが、それまでにある程度周りの事を把握しておく必要もあった。この連合で機先を制すには必ず何処かの勢力の協力が必要になる。それが劉備になるかはまだまだ分からないが、話しておいても損はしない。

 

【華琳】「ふむ……ところで、そちらは?」

 

 華琳は先ほどから劉備の隣にいる小さな少女に意を向けてたずねた。

 

【劉備】「あ、まだ紹介してませんでしたね。朱里ちゃん」

 

【諸葛亮】「は、はい。諸葛亮、字を孔明といいます。よ、よろしくおねがいしましゅっ……はわわ」

 

 紹介された子はずいぶん背が低く、琥珀と変わらない程度でほとんど子供だった。華琳を前にして緊張しているのか、ずいぶんひどい滑舌で自分の名前を名乗る。

 

【華琳】「ふふ。…伏龍として名は聞いているわよ。諸葛亮。貴方のこと覚えておくわね。」

 

【諸葛亮】「はわわ…」

 

 やはり諸葛亮は慌てていた。

 

【華琳】「そうね。せっかくだからこちらも紹介しておきましょうか。薫」

 

【薫】「え、あたし?」

 

【華琳】「えぇ、黄巾のときにいなかったあなたを紹介しておこうと思ってね」

 

 後ろのほうにいた薫がおずおずと前へでてくる。華琳の隣来たところで小さくため息をついた。

 

【薫】「はぁ…。えと、あたしは司馬懿、字を仲達っていいます。」

 

 薫はどう名乗ろうか、少し考えながらそういった。

 

【諸葛亮】「司馬懿さん…ですか」

 

【薫】「そうだよ、諸葛亮」

 

【諸葛亮】「はうっ」

 

 呟きを聞き取られたのがショックだったのか、諸葛亮は得体の知れない声をあげた。

 

【劉備】「あはは。…あ、そういえば雛里ちゃんは?」

 

【関羽】「雛里ならば、まだ兵糧の確認に行っていますが」

 

【劉備】「あ…そうだったね。じゃあ仕方ないかぁ」

 

 残念そうに劉備は呟いた。どうやら”ヒナリ”という者も紹介しておきたかったらしい。

 

【桂花】「華琳さま。我々もそろそろ…」

 

【華琳】「そうね。では、劉備。また後で軍議で会いましょう」

 

【劉備】「はい。」

 

 互いに笑顔で別れを言いながら、華琳たちは劉備の天幕をでた。

 

 

【諸葛亮】「………司馬懿…さん。」

 

【劉備】「…?」

 

 あまりに小さな呟きは今度は誰にも聞こえることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【華琳】「相変わらず、人材には恐ろしいほど恵まれているわね。あの子は」

 

【薫】「劉備のこと?」

 

【華琳】「えぇ」

 

 自分達の天幕につき、一息ひれたところで華琳が話し始めた。

 

【桂花】「たしかに、関羽、張飛という猛将に加え、諸葛亮という軍師も参入していましたし。」

 

【薫】「じゃあ、最後に言ってた”ヒナリ”ってのも?」

 

【華琳】「おそらくは武と智、どちらかに秀でたものか、あるいは両方か。いずれにしても以前より遥かに層は厚くなっているわね。」

 

【薫】「まぁ、将の質でいうならうちも大概だけどねぇ」

 

【華琳】「当然よ。誰が治めていると思っているの。」

 

 自身まんまんに言い放つ姿はやはり華琳らしかった。

 

【春蘭】「なぁ、秋蘭」

 

【秋蘭】「なんだ、姉者」

 

 そんな会話の外で、春蘭は妹に気になったことを聞いていた。

 

【春蘭】「さっきから北郷の姿が見えないのだが…どこへいったんだ?あの馬鹿は」

 

【秋蘭】「姉者にそういわれては北郷も不憫だな…。北郷なら、ほら」

 

 秋蘭が指差した方向に顔を向けた。

 

 

 

 

 

【一刀】「はぁ………」

 

【袁紹】「我々袁家の者がじきじきに檄文を放ったと言うのに、なぜ!どうして!華琳さんはああも平然と遅れることができるんですの!どうも私との立場の差と言うものを理解していないように思えて仕方ありませんわ。第一…………」

 

【一刀】「…疲れる」

 

 

 一刀は対袁紹のおとり役となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 劉備陣中。そこには未だに自陣へと戻らない者がいた。

 

【琥珀】「………」

 

 琥珀。六本の剣を扱う曹操軍の将。しかし、今は一刀に一本を預けているために五本の剣を腰から下げていた。そして、そんな彼女が見つめる先には、一人の女性がいた。

 

【関羽】「――――。」

 

 関羽。兵たちに指示を飛ばしているが、琥珀の位置からでは聞こえるはずも無い。

 

【関羽】「………?」

 

 見ていると、関羽が琥珀の視線に気づいたようで、こちらへと向かってくる。

 

【関羽】「……どうした?見ない顔だな。」

 

【琥珀】「…それは劉備の兵じゃないから当たり前。」

 

【関羽】「なんだと…。ならばさっさと自分のところへ戻ることだ。」

 

 外部の者だと知ると、関羽の表情は険しくなった。やはり連合、協力するといっても、互いの関係などこういうものらしい。

 

【琥珀】「うん。もう、戻る。」

 

【関羽】「…あぁ。」

 

 琥珀は踵を返す。

 

【関羽】「………まて。お前、私とどこかで会ったことはあるか?」

 

 琥珀の動きを眺めていた関羽は突然そう尋ねた。

 

【琥珀】「………またね、”愛紗姉”」

 

 だが、琥珀はそれに答えることも無く

 

【関羽】「な――。ま、待て!!」

 

 それだけ告げて、関羽の前から姿を消した。

 

 

【関羽】「………まさか…琥珀…か…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【薫】「ん~~~」

 

 一通り作業も終って、薫は外にでていた。

 

【薫】「あぁ~………疲れるなぁ…まぁ、そうも言ってられないんだけど」

 

 ぐちぐちと不満を空に向かってぼやいてる。

 

【雪蓮】「かおる~~~~!!!」

 

【薫】「へ?……きゃあああ!!」

 

 突然がばっと何かが覆いかぶさった。

 

【雪蓮】「ああああ~~この抱き心地はやっぱり薫だわ~」

 

【薫】「むぐぐ……ぷはっ……し、雪蓮!?」

 

 二つの山から顔出すと、間近に見知った顔が迫っていた。

 

【祭】「策殿。それでは薫がおぼれてしまうぞ」

 

【雪蓮】「だって気持ち良いんだもん~」

 

【薫】「祭………なんでここに…てか、見張りは…ぁ」

 

 見張りのものが祭の脇に抱えられていた。まんざらでもなさそうな顔をしている。

 

【雪蓮】「挨拶にきただけだから、心配しなくても大丈夫だよ」

 

【薫】「そういう問題かなぁ……」

 

【華琳】「ずいぶん、騒がしいわね」

 

 声が聞こえたのか、天幕からついに華琳が出てきた。

 

【雪蓮】「あら、あなたが曹操ちゃん?」

 

【華琳】「変な呼び方はやめてもらえるかしら、孫策」

 

【雪蓮】「む、まぁ、いいわ~。今回は陣中を回っているだけだしね」

 

 少し不機嫌な顔になるも、雪蓮はそういった。

 

【華琳】「いい加減、うちの軍師を返してもらえる?」

 

【雪蓮】「はいはい。わかったわよ。後で冥琳に何言われるかもわからないし。」

 

 そういうと、雪蓮は薫を解放した。

 

【薫】「ふぅ……」

 

【華琳】「まったく………。」

 

【雪蓮】「あ~あ~、せっかく薫に会えたのになぁ…。ねぇ、やっぱりうちに来ない?」

 

【薫】「あはは~…。遠慮しときます。」

 

【雪蓮】「ちぇ」

 

 子供のように雪蓮はふてくされる。

 

 そんな様子もいつも通りという風に祭は雪蓮をつれて、自陣へと引き返そうとする。

 

【華琳】「孫策」

 

【雪蓮】「んー?」

 

 薫に振られて、落ち込んでいる孫策に華琳は声をかけた。

 

【華琳】「いつまで、虎は地に伏しているのかしら?」

 

 しかし、そんな様子も、その言葉の次には吹き飛んでいた。

 

【雪蓮】「さぁ…。いつまでかしらね…」

 

 その顔は以前見た、戦場での覇王の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いい天気のこんな日に。

 

【袁紹】「ですから、わが名門一族の―――」

 

 こいつの話を聞くなんて、なんて時間の無駄遣いだろうと思うのは俺だけだろうか。

 

 すでに数刻。現代式でいう何時間も経っている。それでも勢いは弱まることなく、袁紹の演説は続いている。

 

【一刀】「はぁ……」

 

【公孫賛】「ん?麗羽じゃないか。それにお前は……」

 

【一刀】「え?」

 

 突然、袁紹の話の間に割ってはいる女性の声。

 

【袁紹】「あら、誰かと思えば、その影の薄さは白蓮さんじゃありませんの」

 

【公孫賛】「あー、もう!薄いとか言うな!」

 

 かなり気にしているようで、その女性はおとなしそうな見た目と反して食い下がった。

 

 しかし、俺はここ最近の鍛錬で神経が鋭くなっている。だからあまり背後に人が来るなんてめったに無かったのだが、それがこんなに近くまで気づかないとなると、相当な薄さかもしれない。

 

【公孫賛】「あ、お前も今失礼な事考えていたな」

 

【一刀】「なんて洞察力だ」

 

【公孫賛】「え?あはは、いや、褒められても困るんだけどな」

 

 別に褒めてない上に、失礼な事を考えていたのは認めたんだが。

 

【公孫賛】「私は公孫賛、字は伯圭だ。」

 

【一刀】「あ、俺は――」

 

【公孫賛】「知っているよ。天の御遣いだろう?あちこちで噂になっているからな」

 

【一刀】「あー、うん。まぁそうなんだけど、一応ね。俺は北郷一刀だよ。真名とか字とかはたぶんない。」

 

【公孫賛】「たぶんって……。まぁ、いいか」

 

【袁紹】「ちょっと!私を置いて、会話を進めるんじゃありませんわ!!」

 

 

 それから、再び袁紹の演説会が始まった。しかし、こんどは観客が二人。先ほどよりも気分は全然楽だった。

 

【公孫賛】「はぁ……」

 

 どうやら相手はそうでもないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――そして、邂逅の一日が過ぎていった。

 

 


 
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