No.93877

~薫る空~25話(洛陽編)

25話です。
琥珀との修行。
そしてコメでも頂いていた手紙の内容。
戦乱へ向かう前のひと時。

2009-09-06 16:36:29 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:5388   閲覧ユーザー数:4336

 

 使者来訪から数日が経ち、朝になった。

 

 さわやかな空気が寝起きで重い体に入り込む。そんな感覚と共に、俺は目を覚ました。

 

【薫】「ん………」

 

 そして、やはりコレもいた。最近はほぼ毎日なので、いい加減慣れ始めてきたが、そのたびに対処に困っているのだ。

 

【一刀】「なぜ自分の部屋で寝ないんだ…………」

 

 本当に頭が痛くなる。薄い掛け布団をめくり上げれば、これもやはり、目の前には衣服のはだけた薫の体というすばらしい光景が広がるわけだ。しかし、そんな光景も今の状況ではゆっくり楽しめそうも無かった。

 

【一刀】「はぁ…………」

 

 ため息をついたとき、不意に、扉の向こうに人の気配がした。それを感じ取ったと同時に、扉が二度叩かれた。

 

【桂花】「入るわよ。………やっぱりここにいたのね薫。」

 

 入ってきたのは予想外にも桂花。

 

 桂花は部屋に入り、ゆっくりと俺の目の前まできた。

 

【桂花】「薫、起きなさい。ほら」

 

【薫】「ん、ん~~~~…………んあ…?」

 

 かなり手馴れた手つきで、薫の体を揺らしながら強引に起こしていく。

 

【薫】「ん……桂花……おはよ。」

 

【桂花】「いいから、はやく来なさい。いつまでもこんなところにいたくないのよ」

 

【薫】「あい…………」

 

 目じりをこすりながら、薫はふらふらと立ち上がり、不安定な足取りで扉まで歩いていく。

 

 俺はといえばそんな光景を眺めるだけだった。というのも、あまりにも桂花から話しかけるなオーラがにじみ出ていたから。

 

【桂花】「………」

 

 そんな桂花が扉の前で立ち止まった。

 

【一刀】「ん、なんだよ」

 

 こちらに視線を向けてきたので、俺はそれに答えるように話しかけてみた。

 

【桂花】「変態精液、薫に何もしてないでしょうね」

 

【一刀】「…してないよ!ていうか、お前だんだん発言がやばい方向に言ってるぞ」

 

 相変わらずな桂花だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますために俺は顔を洗い、皆が集まっているであろう広間に向かった。

 

 少し大きな音を立てて、広間の扉を開けると、そこには全員とは行かないが、いつものメンバーがちらほら集まっていた。

 

【華琳】「いい目覚めだったようね。」

 

【一刀】「あぁ、出来ればずっとこういう朝がいいよ」

 

 入るなり、華琳の皮肉を食らってしまうのだから世話が無い。

 

【桂花】「華琳様、大体は揃ったのではじめてもよろしいかと」

 

【華琳】「そうね」

 

 桂花の言葉に華琳は同意を示した。内容を知らない俺にとってはまったく意味の分からない会話だったが、それもすぐに解決した。

 

【華琳】「皆、聞きなさい。昨夜、北の袁紹から文が届いたわ。」

 

【季衣】「お手紙、ですか?」

 

【華琳】「えぇ」

 

【一刀】「内容は?」

 

【華琳】「今から話すわ」

 

 袁紹からの手紙。俺にはもうそれだけで内容は半分以上理解している。この時期に袁紹が送る文なんてひとつしか考えられなかった。

 

【華琳】「皆、都…洛陽での噂は知っているわね」

 

【薫】「官が好き放題してるってやるでしょ?…たしか今の帝も洛陽の太守が担ぎ上げたんだっけ」

 

【華琳】「えぇ、それを聞いた麗羽がどうやら動き出すようね。」

 

【季衣】「へぇ~袁紹っていい人なんだね」

 

【華琳】「ふふ。本当に義で動くようなら面白いのだけれど。麗羽が考えているのは出世のことだけでしょうね」

 

【一刀】「ふむ…。」

 

 袁紹のイメージについてはほぼ俺の知識と同じようだ。実を言えば司馬懿だの夏候惇だのイメージからかけ離れた奴が多すぎて自信を失いつつあった。

 

 しかし、袁紹が直接檄文を送るというあたりで俺の知識ともやはり少しズレが生じているようだ。たしか本来なら、別の人物が挙兵し、袁紹や袁術はそれに便乗する形だったはず。

 

【華琳】「それで、内容は各地の諸侯に向けて当てられたもの。洛陽の太守董卓を討伐するための連合を挙げるようね。」

 

【秋蘭】「それでは、我らもその連合に…」

 

【華琳】「えぇ、参加するつもりよ。…これは機だと私は考えているわ。」

 

【薫】「そだね。名を上げるには丁度いい」

 

【桂花】「では、具体的に遠征の案をまとめておきます。薫、手伝いなさい」

 

【薫】「は~い(やっぱあたしか…………)」

 

 

 一通り華琳の話が済んだところで、こんどはそれを実行に移していく。桂花、薫、秋蘭といった知識組はこれからかなり忙しくなるだろう。

 

 それを見ると手伝ってやりたくもなるが、ようやく文字が読める程度になった俺に手伝えることもあまりなく。

 

 仕方なく、俺はいつも通り剣の鍛錬に勤しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

―――中庭。

 

【一刀】「はっはっはっ………」

 

【琥珀】「……速度が落ちてる。もうばててきたか?」

 

【一刀】「今……はっはっ……話っ…かけるなっ……」

 

 しかし、俺は剣を習うという段階ではなく、琥珀が鍛錬に付き合ってくれるといった次の日から、走りこみの毎日だった。

 

【琥珀】「……お前は体もヘタレなんだから、体力つけてから練習だ」

 

【一刀】「わかってる…っ!!」

 

 明らかに基礎体力からみんなに劣っている俺がすることは本当に最初からというのは理解している。しかし、それと息切れはまったく関係ないわけで。すでに街中、城壁、城内の敷地とアップダウンの厳しいコースを数十週している。

 

 これなら疲れて当たり前だと思いたいが、となりにまったく同じペースで同じだけ走っている奴が余裕ぶちかましてくれているおかげで弱音もいえない。

 

 

 それからさらに二桁になるかというだけ走った後、一度休憩を挟んだ。

 

【一刀】「ふぅ………」

 

【琥珀】「………なさけねぇ」

 

【一刀】「一瞬でキャラを変えるな」

 

【琥珀】「………コハクはコレくらいの距離は8歳の時には走れたぞ。よゆーでな」

 

 言ってから気づいたが、”キャラ”に琥珀はツッコミをいれず、そのまま話を続けた。理解しているとは思えないが、琥珀だからよく分からなかった。

 

【一刀】「はぁ………すごいな、お前」

 

【琥珀】「む………………嘘だ。よゆーじゃなかった。」

 

【一刀】「はは。なんだよそれ。」

 

 俺の反応がおきに召さなかったのか、琥珀はわざわざ言い直した。あいかわらずつかみどころの無い奴だが、以前よりは会話が増えている気がする。

 

 ずっと一緒にいて増えないほうがおかしいのだろうが。

 

 

【琥珀】「それじゃ、今のをもう一回いくぞ」

 

【一刀】「まじか…………」

 

【琥珀】「これを息切れなしでいけるようなったら次教えてやる。」

 

【一刀】「お前何気に武術指南楽しんでるだろ」

 

【琥珀】「………………いくぞ。」

 

 最近分かったことだが、琥珀が会話で長い間を取るときはどうやら照れている時らしい。表情が基本的に動かないからそういうところで判断するしかなかった。

 

 俺は走り出した琥珀を追いかけるように後から走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

【華琳】「………………………。上手くやりなさい、一刀」

 

 二人が走り去った後、いつからそこにいたのか、華琳は二人の背中を見つめ呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

【文醜】「袁紹さま!諸侯への通達、完了しましたよ~」

 

【袁紹】「ごくろうですわ」

 

 冀州、勃海郡。その地で袁紹は先日の話を進めていた。自室にて政務を行っている最中に文醜からの報告を聞き、思考を切り替える。

 

【文醜】「しっかし、麗羽様が自分から動くなんてめずらしいですね~。あの手紙なんて書いてあったんですか?」

 

【袁紹】「手紙?……あぁ、あれならば、もう捨ててしまいましたわ」

 

【文醜】「はぁ!?」

 

【袁紹】「じょ、冗談ですわよ。大きな声を出さないで。………これですわ」

 

 袁紹は引き出しから、先日届けられた手紙を文醜へと手渡した。

 

 それを受け取り、文醜は折りたたまれた手紙を拡げ、読んでいく。

 

 ………………。

 

【文醜】「………………。」

 

【袁紹】「あまり期待はしていませんが、どうですの?」

 

 文醜が完全に黙ってしまい、すこしの静寂がその場に生まれる。

 

【文醜】「だめだ」

 

【袁紹】「え?」

 

【文醜】「袁紹さま、あたい………字読めないっす」

 

【袁紹】「………………。」

 

 その言葉をきっかけにさらに静寂は間延びした。

 

【袁紹】「もういいですわ!!!貸しなさい!!!」

 

【文醜】「うわわっ!」

 

 もはや期待するとかしないとかの段階ではなかった。文醜から手紙をひったくり、袁紹は内容を読み上げる。

 

 

 『――袁本初殿。

 

 突然の文をお許しください。しかし、これも火急故にお知らせする次第。

 

 貴殿は近頃の都の様子はご存知だろうか。官は堕落し、民は疲弊し、国は廃り、

 

 その一方で、太守及びその臣下達の暴政。その事態は既に噂という形で大陸全土に広まっている。

 

 それがどういう結果を招くのか。貴殿ならばお分かりいただけるであろう。

 

 さらに、これはまだ噂にはなっていないものだが、近々、洛陽太守董卓は都を洛陽から長安へと遷都しようと目論んでいるらしい。

 

 いくら相国の地位にあるとはいえ、これはもはや暴挙といえるのではないだろうか。

 

 この事態に遺憾を覚えながらも、訳あって、私では手の届かぬ問題。それ故に貴殿にこの国を運命を託したい。

 

 ”名門”と謳われた袁家を治めるあなたならば、この国を救ってくれると信じている。

 

 名すら明かせぬ自分の言葉がどこまで信を置くに足るかなどは重々承知しているが、この国の未来を憂う者としての願い。

 

 願わくば、あなたがこの国、この時代を変える天賦の才溢れる存在だと信じている。』

 

 

【顔良】「………………な、なんだか、後半はひたすら麗羽さまを褒めちぎっていただけのような…」

 

 途中から部屋に来た顔良が少しうんざりしたような様子で呟いた。

 

【袁紹】「このような事態!黙っていられるはずはないでしょう!この国を救う者として!!!」

 

【文醜】「あぁ~、なんかすんごいはまっちゃってる…」

 

【顔良】「自分に酔っちゃってるもんねぇ……」

  

【袁紹】「さぁ!出撃の準備ですわよ!!」

 

 何処とも無く、空へ向かって指差し、袁紹は叫ぶ。

 

【顔良】「麗羽様以外はできてますよ~…」

 

 君主がコレでは、臣下の苦労は計り知れないものだろう。

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、陳留。

 

 もうすぐ夕方にさしかかろうかという頃。空はオレンジ色と青色にはさまれ、紫がかっていた。

 

【一刀】「ふぅ…」

 

【琥珀】「………んじゃな。」

 

 琥珀との鍛錬を終える。鍛錬といっても、いまだに走りこみなど基礎体力向上形ばかりなんだが。

 

 そんな内容でも、太刀は放さず持っていろというのは琥珀の指示。正直これをもちながらではかなり走りにくいが、重さや存在に慣れろ。との事らしい。

 

 琥珀と別れた後、俺は自室へと向かう。

 

 しかし、その途中で思わぬ者とでくわした。

 

【薫】「あ、一刀」

 

【一刀】「お、どした?」

 

 薫だった。

 

【薫】「どしたって、遠征の準備でしょ?桂花ってば人使い荒すぎるんだよ」

 

【一刀】「ははは。」

 

 よく見れば、薫はいくつか書簡を抱えていた。

 

【一刀】「いくつか持つよ。」

 

【薫】「え?…あ。」

 

 薫が何か言い出す前にほいほいと抱えていた書簡を奪う。

 

【一刀】「桂花のとこでいいんだよな?」

 

【薫】「ちょ、ちょっといいよ!鍛錬で疲れてるんでしょ?」

 

【一刀】「大丈夫だよ。ほらいくぞ」

 

 少し強引に話を切り上げ、俺は歩き始める。ブツブツといっていた薫だが、あきらめて俺の後ろを歩き出した。

 

【薫】「ほんとに無理して倒れても知らないからね」

 

【一刀】「そのときは薫が看病してくれるんだろ?」

 

【薫】「……なんであたしが…」

 

 最後はかなり小声になっていた。

 

 そんな風に話していると、桂花の部屋までたどり着いた。書簡の位置をずらし、俺はなんとか空いた左手で扉を叩く。

 

【桂花】「薫?はいっていいわよ」

 

【一刀】「はいるぞ」

 

 静かに音を立てて、扉をあけると、中には当然のごとくネコミミスタイルな桂花がいた。

 

【桂花】「!?なんであんたが一緒にいるのよ!」

 

【一刀】「書簡もってくるの手伝ったんだよ。数多かったしな。ほら」

 

 俺は抱えていた書簡を桂花の机の上に並べていく。それなりに小山ができてしまった。

 

【薫】「あたし頼んでないってば…」

 

 なにやら小声になっている薫の事はスルーして、俺はその場を後にしようと踵を返す。

 

【薫】「あ、一刀」

 

【一刀】「ん?」

 

 すれ違うかというところで、薫に呼び止められた。

 

【薫】「まぁ…ありがと。助かったよ」

 

【一刀】「おう、コレくらいならいつでも言えよ」

 

【桂花】「いいから、早く出て行きなさい。空気が汚れるわ。まったく…」

 

【一刀】「へいへい…」

 

 桂花の言葉もあって、俺はすぐにその部屋を出た。まぁ、疲れていないかといえば嘘になるので、その後は湯浴みしてからすぐに自室へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

【一刀】「すぅ………すぅ………」

 

 夜。一刀は月明かりを浴びながら、その日の疲れを癒すべく眠りについていた。

 

【???】「………………」

 

 そこに影がひとつ、忍び寄っていた。ゴソゴソと足音を殺しながらゆっくりと影は寝台へと近づく。

 

 目の前まで接近すると、今度は布団を少し持ち上げ、自分の体をその中へもぐりこませる。

 

【???】「………………♪」

 

【一刀】「………♪じゃなああああああああああい!!!!!」

 

【???】「きゃあ!!」

 

 寝たふりよろしく、一刀は思い切り布団をめくり上げた。

 

【一刀】「毎晩毎晩やられてればいい加減なれるわ!さっさと自分の部屋に…………あれ?」

 

【天和】「あぅ………」

 

 そこにいたのは、ここ最近毎朝俺の隣にいるあの人ではなく、天和だった。

 

【一刀】「……いやいや。なんでお前がここにいるんだ。」

 

【天和】「だって最近一刀、かまってくれないんだもん~」

 

 それは忙しかったから……と言い訳の聞く天和ではなかった。

 

【一刀】「よくここに来れたな………」

 

【天和】「見張りの人、天和達のふぁんなんだって♪」

 

【一刀】「よし、人事異動だな」

 

 めずらしく即断即決が可能な案件だった。

 

 

 

【天和】「ね~、一刀~」

 

 と、そんな事を考えている隙に天和が寝台を軋ませながらこちらへ近づいてくる。

 

【一刀】「ば、馬鹿、あんまり近づいてくるな。それ以上はまずい!」

 

【天和】「一刀、天和のこと嫌いなの?」

 

【一刀】「い、いや、そんな事は………そりゃ好きだし……いや、でもこれは…」

 

【天和】「ならくっついてもいいよね♪」

 

 がばっと俺に抱きついてくる。まずい。この距離はまずい。

 

【天和】「ふふん♪」

 

 俺のそんな葛藤も知る由も無く、天和はその豊かな胸を押し付けてくる。

 

 そんな状況に当然のごとく俺の心臓は鼓動を早め、頭から股間までフルスピードで血液が駆け巡る。

 

【一刀】「くっ………」

 

 我慢もかなりつらく、今にも天和を押し倒しそうだった。顔が赤くなっているのが体温で認識できてしまうほど、顔が熱い。

 

【天和】「えへへ♪かーずと」

 

【一刀】「うわっ!こ、こら」

 

 今度は腕だけでなく、体全体に足や腰などを絡めてきた。天然なのか、狙ってやっているのか。どちらにしても俺としては限界なのは変わらなかった。

 

 欲望に負けそうになったとき。

 

【地和】「いたああああああああああ」

 

 でかい音と共に扉が思い切り開かれ、向こうから地和の声が聞こえた。

 

【地和】「な、ななな、なにしてんのよお姉ちゃん!!帰るよ!!!」

 

【人和】「はぁ…やはり一刀さんのところだったのね」

 

 この状況を見て、それぞれの反応を示す妹二人。

 

 地和はズカズカと寝台まで近づき、俺から天和をはがした。

 

【天和】「や~~~ん、一刀と寝るの~~」

 

【地和】「もう、変な事言わないで!一刀!あんたも気をつけなさいよ!」

 

【人和】「それでは夜中に失礼しました。」

 

 人和の一礼と共に、騒ぎは通り過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

【一刀】「………なんだったんだ…てか、今何時だと思って……」

 

【華琳】「本当にそうね。いい迷惑だわ」

 

【一刀】「アラ、カリンサマ」

 

 終ったと思って扉から目を離してみれば、何故か部屋の中に華琳がいた。しかも手には普段の絶ではなく、鉄剣が持たれている。

 

【一刀】「………こんな時間に…どうしたんだよ」

 

【華琳】「うるさくて眠れないから、元を絶ちに来たのよ。この部屋では鎌よりも剣のほうが立ち回りやすいでしょう。だから、今日はコレにしたわ」

 

 そういって、華琳はこちらへ手に持っている剣をむけてくr―――

 

【一刀】「おわぁっぁぁあああ!!」

 

 ――振りぬいた。

 

【華琳】「琥珀との鍛錬のせいでよけるのが上手くなっているわね……」

 

【一刀】「せいでってなんだよ!」

 

【華琳】「いいから、おとなしく斬られなさい!」

 

【一刀】「ちょっと理不尽すぎないか!?って、あ――」

 

【華琳】「え?――きゃ!!」

 

 変に暴れたせいで華琳は足元に転がった椅子に足を引っ掛けた。

 

【一刀】「よっと…。大丈夫か?」

 

【華琳】「………えぇ」

 

 タイミングよく気づいたこともあり、倒れきる前に俺は華琳を受け止めた。

 

【華琳】「………」

 

【一刀】「ん?どうしたんだよ」

 

 ボーっとしている華琳に俺は声をかける。気づいていなかったのか、ビクっと体を反応させて、華琳は答え返した。

 

【華琳】「な、なんでもないわ。………なんだか興も冷めたし、もういいわ」

 

【一刀】「そっか。………華琳」

 

【華琳】「?」

 

【一刀】「おやすみ」

 

【華琳】「えぇ、おやすみなさい」

 

 挨拶にはきちんと反応してくれる。

 

 華琳は部屋でて、扉を閉めると、自室へと戻っていったようだ。

 

 

【一刀】「はぁ………なんだか寝る前より疲れたな……ちゃんと寝るか………」

 

 一通り散乱した部屋を元に戻した後、一刀は寝台へともどり、再び眠りに着いた。

 

 

 


 
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