三十年前の宮廷食堂。騎士団員たちがミネルヴァの噂話をしています。
「やっぱりミネルヴァは一番イイ女だよなぁ」
「そうか?ミス・アラヴェスタに選ばれてお高く止まってる気がするぞ…」
「そりゃお前、こっぴどく振られたからって逆恨みしてるだけだろ?」
「他の侍女なら、ちょっと誘えばやらせてくれるんだが…」
若かりし頃のユリアーノが、宮廷食堂に現れてビュッフェをトレーに盛り付けると、ミネルヴァの噂話をしている騎士団員の隣に腰掛けました。
「綺麗なバラにはトゲがある。ガードが固いのは自分を安売りしたくないからだろう?」
「ユリアーノなら顔も良いし、ほっといても女が寄ってくるだろう?」
「それが挨拶をしただけで逃げられてしまうんだ。私の何がいけないのだろう?女の扱い方は本には載っていないからわからない」
「百年に一度の秀才って言われてるユリアーノでもわからない事があるんだな」
「すまないが私に女の口説き方を教えてくれないか?」
「壁際に追い詰めて、お前が好きだと言いながら、壁を手でドンッ!とやると良いらしいぞ?女はそれでグッと来るそうだ。侍女たちが話してるのを盗み聞きした」
「そんな紳士的ではないやり方で、本当に女が落とせるのか?今より嫌われそうな気がするのだが…」
「ああ、でもユリアーノみたいなイケメンに限ると女どもは言ってた」
「うーむ、騙されたと思ってやってみるか…。今以上に嫌われる事はないだろうし、当たって砕けてみるよ?」
ユリアーノはミネルヴァが廊下を掃除をしているところに近付きました。教わった通り、壁際に追い詰めてから手を壁にドンッと置きます。
「ユ、ユリアーノ様!あの…、私に何のご用でしょう?」
「えっと、その…。今日は良い天気ですね!」
「ええ、そうですね…」
ユリアーノはどうしても好きだと言えず口をもごもごしています。ミネルヴァも胸のドキドキが収まらず、息が苦しくなって来ました。
「その手を退けていただけますか?こんなところを人に見られたら変な噂を立てられて困ります」
「ああ、すみません…」
ユリアーノが壁に置いていた手を退けると、ミネルヴァは小走りで逃げて行きます。様子を見ていた騎士団員が物陰から出て来て、落ち込んでるユリアーノの背中をポンっと叩きました。
「ダメだった…。ますますミネルヴァに嫌われてしまった」
「まあ、そう落ち込むなって!お前なら他にいくらでも相手はいるさ。なんなら女を紹介しようか?」
「父上から成人したら恋人を作れば良いと言われていたが、成人しても恋人の作り方がわからないのに、一体どうやって作れと言うんだ?」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第123話です。