侍女たちの控え室でミネルヴァは昔話をしていました。
「へぇ、そのユリアーノ様って、アーク様みたいなイケメンだったんだ?」
「ユリアーノ様は三十年前、この王宮のアイドルでしたからね」
「侍女長様はユリアーノ様とお付き合いはなさらなかったんですか?」
「私はその頃、前国王の一番贔屓の侍女でしたので、私がユリアーノ様とお付き合いしたりしたら、ユリアーノ様は拷問を受け、城門前で一週間、晒し者にされた挙げ句、首をはねられた事でしょう」
「それで侍女長様はユリアーノ様の事、諦めちゃったんですか?もったいなーい!」
「ユリアーノ様はその後、獣人討伐隊に入って帰って来なかったのです…」
「えっ!ユリアーノ様死んじゃったの?」
「いいえ、五年前に突然、現れてアラヴェスタ騎士団選抜武術大会で優勝されてました」
「ああ、それ知ってる!偽名で登録して勝ち抜いたけど、授賞式でバレちゃったんでしょ?」
「私はその時、受付をしていましたので、参加申請書のユリアーノ様の筆跡を見て、ユリアーノ様だと見抜いていたのですが、元宮廷魔術師だったユリアーノ様にはもう武術大会の参加資格がないので、偽名を使ったのだと思います」
「どうしてユリアーノ様だって騎士団に言わなかったんですか?」
「ユリアーノ様が参加されたのは何か事情があると察していたからです。私がユリアーノ様の事をバラしたりしたら、ユリアーノ様がお困りになるでしょう?」
「侍女長様、その時にユリアーノ様に告ったら良かったのにー。まだ好きなんでしょ?」
「好きだと言う気持ちを凍らせて、ユリアーノ様の命をお救いする為に好きでもない前国王に抱かれるのは苦痛でしたが、それでユリアーノ様の命が助かるならば、私は本望でした」
「でも侍女長様はユリアーノ様に抱かれたかったんでしょう?」
「前国王が私に飽きて、騎士団の者に褒美として与えるようになってから、私の身体は穢れきっていましたし、私はもう歳を取りすぎていたので、ユリアーノ様に愛される自信はなかったのです」
「でも壁ドン!して来るって絶対、侍女長様に気があったんだと思いますよー」
「あれは本当にビックリしました。顔から火が出そうでした…」
「侍女長様の甘酸っぱい想い出ですねー」
「あの日の夜は寝付けず、ユリアーノ様とお付き合いをする妄想に耽っていたのです…」
「あはは!侍女長様、可愛いー」
…つづく
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
昔、書いていたオリジナル小説の第124話です。