ゲイザーは宮廷楽士の控え室で、アークが帰って来るのを待っていました。
「アーク殿だけ国王の寝室に呼び出されたようだが、大丈夫だったのか?」
「身体検査を受けましたが、私の翼を咎められるのかと思いましたけど、特に何も言われませんでした…」
「アーク殿が女性に見えたのかもしれないな」
「そのようですね。私が男なので国王様はガッカリしておられました」
「テオドールはまだ私の正体に気付いていないのか?謁見の間で話した感じでは国王は私がゲイザーであると気付いていなかった」
「テオドール様は純粋にメサイアのファンなのだと思いますよ?悪意を全く感じませんので」
「男がメサイアのファンになるとは思えないのだが…」
侍女の控え室ではまだメサイアの話題が続いています。
「ああ、アーク様…。マジ、天使だわー」
「そう言えばアーク様の背中の翼は作り物だと思ってたら本物だったの!」
「えっ、じゃあアーク様は本物の天使?」
「人間であのクオリティの男はいないわよー」
「なんだ、アーク様は本物の天使だったんだ。納得ー」
「天使がなんで人間の世界に来てるの?」
「修業の為じゃない?」
「どっちでも良いわー。眼福、眼福」
「王宮にいたら楽しみなんてほとんどないんだから、アーク様のような天使がいてくれたら、それだけで楽しくなるわー」
「あなたたち!何、無駄話してるの?仕事をなさい、仕事を…」
ミネルヴァがだらけた侍女たちを叱咤激励します。
「はーい。侍女長様ー」
「侍女長様は寿退職なさるつもりはないのですかー?」
「私は仕事が忙しくて男にかまけてる暇などありませんから…」
「ここにいたら国王の寵愛を受け続けるだけだから、私も良い人が現れたら、すぐにでも寿退職したいくらいですよー?」
「そう簡単にも行かないのです。せっかく婚約が決まっていても、婚約者が首をはねられて破談になった娘もおりましたし…」
「ああ、それってサラの事?サラも美人だからモテるのに薄幸な娘だったわよねー」
「美人だからって幸せになれるとは限らないのですよ」
ミネルヴァは遠い目をしながら言いました。若かりし頃の自分の事を思い出します。
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第122話です。