次の日からアークはバンド活動を休止したので家で退屈そうに過ごしています。
「私がオズワルド様の部下だった頃、獣人の国を探して来いと命じられた事があったんです」
「アーク殿なら空が飛べるからすぐ見つかりそうですが、見つからなかったのですか?」
「ええ、すぐ見つけました」
「なぜオズワルドに報告しなかったのです?」
「言わなければオズワルド様は手柄を上げられませんし、言えば平和なこの国が地獄と化します。私には全く利益がないのに、言う必要がありますか?」
「アーク殿が黙っていてくれたおかげで、マルヴェールの平和は保たれました。ありがとうございます…」
「私は待っていたのです。私を救い出してくださるメサイアの存在を」
「それがナターシャだったと言うわけか」
「はい、ナターシャ様が現れた時、メサイアだと直感でわかりました」
「ナターシャの命を救ってくれたのもアーク殿でしたね。その節はありがとうございました」
「私も救われたのです。今こうして幸せに暮らしているのが、私にはとても有り難い事です」
「アーク殿のおかげで私も助かっております」
「私にはテオドール様がメサイアを必要としている気がしてならないのです…」
「メサイアとはバンドの方の話ですか?」
「いえ、救世主の方です。今のテオドール様の状況は、昔の私と酷似しています。暴君に仕える哀れな僕」
「神父を拷問しなかったのは神を信じているからだからな」
「テオドール様は待っておられるのではないでしょうか?メサイアが現れて暴君から解放してもらえる日を…」
「おそらくテオドールも国王の暴君っぷりにはうんざりしている事だろう」
「活動休止中だと言うのにインスピレーションが湧いてきました。創作活動に入ります」
「また新曲を思い付いたのか?私はまだ何も思い浮かばないと言うのに…」
「私はテオドール様をお救いしたいのです。宮廷楽士になればお救い出来るかもしれない…」
「飛んで火に入る夏の虫だが、敵の罠にわざと飛び込むと言うのか?」
「新曲が完成したら噴水広場に行ってもよろしいでしょうか?」
「その時は私も一緒に行こう。私もメサイアの一員だからな…」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第112話です。