No.955028

ビーストテイマー・ナタ106

リュートさん

昔、書いていたオリジナル小説の第106話です。

登録タグはありません

2018-06-04 16:52:44 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:131   閲覧ユーザー数:131

ナタはとんがり帽子をひっくり返しておひねりを集めています。

 

「この子、アーク様の妹さんでしょ?可愛い」

 

ナタは頭を女性ファンになでなでされました。男性ファンが一人だけ並んでいます。アークに握手を求めると、アークは笑顔で応じました。

 

「男性ファンはあなたが初めてです!こんなにたくさん、おひねりをありがとうございます」

 

「初めて聞いたが、メサイアの曲のおかげで彼女と仲直り出来たよ?」

 

「本当ですか?僕の曲で恋人と仲直りしたなんて嬉しいです!」

 

ゲイザーにも握手を求めましたが、ゲイザーは顔面蒼白になって、手で顔を覆い隠しました。

 

「ダーク殿、握手してはくれませんか?」

 

「兄貴!大事な男性ファンだから、握手してあげて欲しい」

 

「すまない、気分が悪い…」

 

ゲイザーは公園の茂みの裏に、ヨロヨロと駆け込んで行きます。ナタが後を追いかけました。今にも吐きそうになって俯いている、ゲイザーの背中をナタはさすっています。

 

「おじさん、気持ち悪いの?ゲーゲーする?」

 

「あれはアラヴェスタ軍の現騎士団長・テオドールだ。普段着だからオフのようだが…」

 

「えっ…、おじさんだってバレちゃったの?」

 

「あの様子ではおそらく気付いていないと思うが、心臓が止まるかと思った…」

 

ナタがアークのところに戻ると、ナタのとんがり帽子をアークが持って、おひねりをもらっています。

 

「アーク様!アップルパイを焼いてきたので、あとで食べてください」

 

「わぁー!アップルパイ、大好きなんですよ」

 

「アーク様の大好物だと思って、心を込めて焼きました!」

 

リボンの付いたカゴの中に手作りのアップルパイが入っており、上からガーゼのハンカチを軽くかぶせてありました。

 

「あの…ダーク様は具合が悪くなってしまったのでしょうか?」

 

モジモジしながら、地味目の女性が尋ねてきます。

 

「ええ、兄貴は少し病弱なので…。きっと無理して疲れてしまったんだと思います」

 

「ダーク様の事が心配です…。私、ダーク様推しなので…」

 

「兄貴のファンなんですね!兄貴にはあなたの事、あとで伝えておきますよ?ファンが出来たと聞いたら喜ぶと思います」

 

「手紙を書いてきたので、渡してください!」

 

アークは赤いハート型に封蝋してある、手紙を預かりました。見るからにラブレターのようだと思いましたが、アークは笑顔を崩さずに受け取ります。ファンがいなくなってから、ゲイザーのいる茂みの中に入りました。

 

「突然、どうされましたか?随分と気分が悪そうでしたが…。ファンレターをもらいましたので、どうぞ」

 

「騎士団長のテオドールがいた。さっきの男性ファンには気を付けろ?バレたら捕らえられてしまう。俺はしばらくアラヴェスタには来ない事に決めた」

 

「そうですか…。ダークファンの女性が残念がるでしょうね…」

 

「俺のファンなどいるわけないだろう?」

 

「この手紙を読めば、わかると思いますよ?」

 

ゲイザーは手紙を受け取りました。満更でもないようです。

 

…つづく


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択