No.955022

ビーストテイマー・ナタ105

リュートさん

昔、書いていたオリジナル小説の第105話です。

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2018-06-04 14:37:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:105   閲覧ユーザー数:105

騎士団長は久々の休日を恋人と共に過ごしていました。噴水広場のベンチに座って話しています。

 

「もし私が国王の怒りを買って、首をはねられたらどうする?」

 

「もう!テオったら、またその話?せっかくのデート中にやめてよ…」

 

「昨日も危うく首が飛びそうになった…。騎士団長に昇格したら長生き出来ないと言われていてな…。貧乏くじを引かされたと思っている」

 

「あなたが死ぬなんて考えたくないわ。お願いだから、その話は二度としないで…」

 

「生きているうちにパーッと金を使いたくて恋人を作っただけだ。なんでも欲しいもの買ってやるぞ」

 

「そう…。私の事、愛してないのね」

 

「宝石が良いか?ドレスが欲しいか?高級レストランに食事でも行くか?」

 

「物で釣られる女だと思わないで!」

 

噴水広場に奇抜なファッションの二人組が現れました。リュートを出して試し弾きしているようです。

 

「あれはなんだ?怪しい二人組だな」

 

「ああ、あれはメサイアって言うバンドらしいわ。今、アラヴェスタで大人気なのよー」

 

「ん?あの黒髪の男の方、どこかで見覚えがあるな…」

 

「私はアークの方しか知らないの。兄のダークは滅多に現れないし…」

 

試し弾きを聴いて足を止める女性が増えて、噴水広場の前は黒山の人だかりが出来ました。テオは立ち上がって、よく見える場所に移動します。

 

「どうしたの?バンドに興味あったなんて意外ね」

 

「私は音楽は好きだよ?なかなか独創的な歌詞じゃないか。路上ライブとやらも面白そうだ」

 

薄暗くなって練習が終わったらしく、アークが観客に向かって手を振りました。

 

「みんな!今日も集まってくれてありがとう。今日は兄貴も来てるんだ。カムヒアー?」

 

見るからにヤル気のなさそうな態度で、ゲイザーはアークの隣に移動しました。

 

「兄貴に来てもらったのは新曲を披露する為だったんだ!それでは聴いてください」

 

「きゃー!アーク様、素敵!!」

 

「ダーク様もこっち向いてー?」

 

演奏が始まると騒いでいた女性ファンも急に鎮まります。アークはノリノリでリュートをかき鳴らしていますが、ゲイザーはあまりノリ気ではなさそうに弾いています。

 

「やはりあのダークと言う男、どこかで見た事があるな…。一体、どこで見たんだろう?なぜか思い出せない」

 

「地味で目立たないけど、アークよりダークが好きって言ってる子、結構多いのよねー」

 

長い前奏が終わって歌唱が始まりました。アークの声はよく聞こえますが、ゲイザーはボソボソ小さな声で何か呟いてるだけです。

 

「濡れてしなやかなそのボディー。クネクネと腰を揺らしてー。僕の眼は君に釘付けさー。ガラス越しの君は、だんだん色が染まってー。その毒が抜けてゆくー。食べ頃の素敵な娘に成長したらー。焼かれて悶えて、エスカルゴー!」

 

歌い終わると拍手喝采、おひねりを渡す為に列を成しています。

 

…つづく


 
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