ゲイザーたちが宝石を強奪して逃げた後、騎士団員は教会のステンドグラスを破壊して中に侵入しました。
「騎士団長!教会の中を隈なく探しても、人っ子一人おりませんでした…」
「やはり先手を打って逃がしていたか…。ゲイザーめ、相変わらず食えぬ男だ」
「いつも我々より先回りしているので、悔しいであります」
「ギルバートならゲイザーの手を読めたかもしれないのに、国王陛下が一時の怒りに任せて安易に首をはねたりするから、誰も奴の手を読めない…」
「ギルバート様はそれほど優れた策謀家だったのですか?」
「ああ、おそらくはゲイザーの次に頭のキレる奴だった。故にギルバートはゲイザーをライバル視していたのだよ?」
「今回の件もギルバート様がおられれば、こんな事にはならなかったと?」
「そもそもフラウ・マルヴェールを一度捕らえたのはギルバートの策によるものだ」
「確かに…。誰も尻尾を掴めなかった獣人の手がかりを、いとも簡単に掴むのは容易ではありませぬ」
「国王陛下がもう少し賢い人ならばな…。フラウを盾にして、獣人どもを一網打尽にする事も出来たのだ」
「ギルバート様も天国で、さぞ悔しがっている事でしょう」
「おそらくギルバートを生かしておけば、汚名返上の為にゲイザーを是が非でも追い詰めてやろうと躍起になっていた事だろう。私が国王ならばチャンスを与えて奴にゲイザーを捕らえさせたと思う」
「私には騎士団長殿もなかなか頭のキレる方だと思いますが?」
「私は凡人だよ?ただし凡人の中では良く出来る方ではあるな」
「騎士団長殿が凡人ならば、私はただのゴミですね…」
「自分の事をゴミなどと言うではない。本当にどうしようもないゴミは…いや、これ以上は言わないでおく…」
「はっ!自分も今の言葉は聞かなかった事にして置きます」
「国王陛下に今の話が知られると私も首が飛ぶからな」
「騎士団長殿までいなくなっては、もうアラヴェスタは終わりです…」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第101話です。