服を買った後、質屋にやって来て宝石を鑑定してもらいました。
「あんまり価値はなさそうな宝石だね。全部まとめて…五百万ってとこかな?」
「五百万ですか…。ピーターの買い戻しには二百万ほど足りませんね」
「おい、店主!俺たちが教養の低そうなボンクラに見えたのだろう?」
ゲイザーはいつもと違う柄の悪い喋り方をしています。店主は身体をビクッとしました。
「こいつは最高級の宝石だ。これだけあれば、一千万はもらわないと割に合わない」
「一千万は無理だよ…。八百万でどうです?」
「八百万だと…?ふざけるな!」
ゲイザーはドンッと大きな音を立てて机に手を置きました。
「一千五百万だ!これ以下だと言うなら、他の店に行く…」
「わ、わかった!一千万で手を打つ」
「もう遅い!最初は一千万でも良いかと思っていたが、嘘をつくような奴と取引は出来ない」
「すまん!お前の言う、一千五百万出そう…。それでどうだ?」
「最初からそう言えば良かったんだよ?」
店から出るとアークはゲイザーに言いました。
「随分とふっかけましたけど、店のご主人が少し可哀想に思えました」
「アーク、あの宝石は全部で一億以上の価値があるんだ。あの値段ではむしろ安すぎるくらいだよ?」
「えっ、そんなに価値があったのですか?適当に見繕って奪って来ましたが…」
「俺たちの服装を見てわざと安く鑑定していたんだよ」
「僕が前に銀の指輪を持って行った時は、素直に十万出しましたが…」
「それはアークが鎧を着ていたからだろう。騎士なら教養が高い者も多いし、騙すと後々、面倒な事になるからな?」
「鎧を着ているだけで態度がそんなに変わるものなのですか?」
「さっきの店主にはどうやら、田舎から出て来たばかりの世間知らずの若者だと思われていたようだ」
「バンドをやってる方は大体そう言う方が多いですからね」
「バンド名はもう決めてあるのか?」
「いえ、持ち歌もまだ一曲だけですね。『僕の大好きなアップルパイ』と言う曲ですよ」
「それじゃバンド名は『メサイア』でどうだ?救世主と言う意味だよ」
「救世主ですか?我々にピッタリですね!では僕と兄貴の二人組バンドを結成すると言う事で良いですか?」
「ああ、俺の芸名は『ダーク』とでも呼んでくれ」
「ダークですね。承知しました」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第100話です。