ナタはゲイザーの父親を怖がって、ロレインの後ろに隠れました。ロレインはナタをまるで我が子のように抱きしめます。
「その子供はまさかゲイザーの子か!?いつの間にこんな大きな子供が出来ていたんだ!!」
「この子はゲイザーが訳あって、お預かりしてる子だそうですよ?早とちりで怒鳴らないでください」
「その女がゲイザーの嫁か?シスターのようだが、聖職者の結婚は戒律で禁止されているはずだが?」
「私はもうシスターの職は辞めているのです。獣人の耳を隠す為にこの衣装を着ていました」
フラウがヴェールを取ると、尖った耳が出て来ました。
「お前も獣人の仲間だったのか!?」
「あなた!失礼なことを言うのはやめてください」
「私の名はフラウ・マルヴェール。マルヴェール王国の現女王で、前国王フォン・マルヴェールの娘です」
「な、何!?女王陛下であったのか…。と言う事はゲイザーは王族になったと言う事か…?」
「私は今、マルヴェール王国の女王補佐官として働いています」
「ほほう…。随分と出世したものだな?給料はいくらもらっているんだ?」
ゲイザーの父親は急に穏やかな喋り方に変わりました。
「アラヴァニア大陸の通貨とは違いますが、マルヴェールの通貨を結構な高額で受け取っています。生活には困っていません」
「ゲイザー様のお父様とお母様には、マルヴェールで一番良い邸をご用意致します」
「ゲイザーが王族の仲間入りを果たしていたとは…。我が子が女王陛下とご結婚なさるとは夢にも思わなかったぞ?」
「私もこんな事になるとは思っていなかったのです。成り行きでこんな形で報告する事になった事はお詫びします。本来なら親に報告してから決めるべき事でした」
「マルヴェールと言う国は聞いた事もないが、一体どこにあるのだ?」
「それはこれからお連れ致しますので、荷物をまとめてください。あまり多くは持って行けません。召喚獣が飛べなくなりますから…」
「召喚獣だと?ビーストテイマーでも雇っているのか?流石、女王陛下の護衛だな」
「その子供がビーストテイマーです」
「こ、こんな子供がビーストテイマー?バカも休み休み言え!第一級魔術師でないと操れんだろう?」
「ナタ、ビーストテイマーだもん!お師匠様より魔力は上なんだから」
ナタはロレインの後ろから少しだけ顔を出して言いました。
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第68話です。