ナタはゲイザーの母親の膝の上にちょこんと座っています。
「可愛い女の子ねー。この子は誰なの?」
「ナターシャは魔法使い・ユリアーノ様の弟子だったのですが、修行の旅に出す為に私に預けられました」
「私、こんな可愛い女の子が欲しかったのー」
「婚約者のサラと別れたのは、私が騎士団を解雇されたからでした。仕送りも滞ってしまい、申し訳ありません…。サラの似顔絵は手紙に同封していたと思います」
「その事は気にしなくて良いのよ?仕送りなどせず、サラさんの為に使って欲しかったし…。似顔絵は見せてもらったわ。綺麗な女性だったわねー」
「私は母上が貧しい暮らしをされているのが不憫で仕方がないのです」
「私は幸せに暮らしていますよ。見ればわかるでしょう?」
「これのどこが幸せだと言うのですか?あのシェルフを見てください!高価な陶器や置物は全て売り払ってしまったではないですか…」
「あらあら、あの人ったら書類をあんなに詰め込んで…。片付けてって言っても、ちっとも片付かないのよ。私が触ると怒られるし、困ったわ」
「家政婦も全て解雇して、母上が何から何までやっているではありませんか?」
「花嫁修行で色々と習っていたから、やろうと思えば何でも出来るのよ?」
「母上ほどの女性ならば父上を見限って、他の男を見つける事も出来たはずです!なぜ父上と離婚しなかったのですか?」
「あなたの事があったから、離婚はしなかったのよ。私も本当に悩んだのだけど…」
「私のせいで母上はこんな不幸な生活を余儀なくされたのですか?むしろ私の為に離婚して欲しかった…」
「ゲイザー、そんな軽はずみな事を口にするものじゃありませんよ?」
フラウは黙って聞いていましたが、ここで口を開きました。
「私がお母様と同じ立場だったなら、同じ事をしたと思います」
「フラウさんと言ったわね。あなたとは気が合いそうだわ」
「お母様と気が合うなんて嬉しいです!」
「嫁と姑は仲良くなれないと、聞いた事があるのですが…」
「あら?私はお嫁さんが来てくれたら仲良くしようって思ってたわよ」
「私もゲイザー様のお母様とは仲良くしたいと思っておりました」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第66話です。